第21話 大会1日目:団体戦決勝①
「それでは決勝は今から1時間後です!それまではダンス部と吹奏楽部による発表をお楽しみください!」
ここで、吹奏楽部の演奏でダンス部の発表がある。ここでこの催しがあるのは選手の休息も兼ねている。とは言っても我々はそんなに消耗していないし、怪我もジークが治してくれたので必要性は薄いが。ところでダンス部と言うと、マリーが入部したはずだが……
「あ、マリーさん!」
いたらしい。さすがアラン、愛しのマリーを見つけるのが速い。
「つーかあの格好……」
「チアダンスだね!」
「可愛いな……」
「ほんとだね」
チアダンスは本来チアダンス部がやるものだと思うが、この学院にチアダンス部は無いので兼任しているのだろう。危ないのかあまりアクロバティックなことはしていないが、ダンス部風に還元していて見ごたえのあるパフォーマンスだ。マリーはとても楽しそうだし、アランは食い入るように見ている。まあ好きな子が赤色のフリフリスカートでポンポン振って、笑顔で踊っていたらそうなるのもわかる。私でも割と見入ってしまうレベルだ。ちなみにジークもしっかり見てはいるが、いつものニコニコ顔なので逆にどういう感情で見てるのかよく分からない。
――――――――
「続いてはカルロス・ロペス先生によるここまでの講評です!」
「えー諸君!おr…私は今日この日を迎えられたことを…」
「ねえ、そろそろ作戦会議しといた方がいいかな?」
「ロペス先生話してっけどいいのか?」
「まあいいでしょ、私たちのために時間潰してる感じだし。」
「それもそうか」
「うん!次はベークマン君のところだよね、どうしようか?」
「とりあえず基本スタンスは同じ感じでいいんじゃないかな、アランは特攻しつつベークマンの対応、ジークはアランと自分の防御と迎撃優先で隙を見て攻撃、私は攻撃主体で戦力を削ぐ。」
「うん僕もそれでいいと思う!ベークマン君、あんまり細かい作戦練ってくるタイプじゃ無さそうだし」
「だな、そこは俺も異論ねえ!だけどよ、問題はベークマンの力も攻撃範囲もとんでもねえってことだな。俺もなるべく抑えるつもりではいるけどよ、完全に防ぐのは絶対無理だ」
「まあそこは例の『奥の手』を使うしか無さそうだね。ね、ジーク?」
「そうだね!」
「でもいいのか?特にカナさんは個人戦で王子に勝たないといけねえんだろ?今『奥の手』見せちまったら不利になるんじゃねえか?」
「だとしても、せっかくの決勝で出し惜しみする道理はないよ。それに、王子にはそれでも勝てるくらいでないと面白くないしね。」
「ハハッ、そうだよな!さすがカナさんだ!」
「確かに、僕も頑張るよ!」
――――――――――
「さあ!皆さん、大変長らくお待たせ致しました!いよいよ魔術大会1年生団体戦の決勝です!」
ワァァァーーーーー!!!!
会場は相変わらずの盛り上がりっぷりだ。
「決勝へと勝ち進んだのはこの2クラス!カナ・ベルナール選手の采配の元、3人の類稀なる技量と完璧な連携、そして手数の多さで勝ち進んできたA組!そしてブラム・ベークマン選手の圧倒的な力と魔法で敵チームを瞬殺してきたH組!果たしてどちらが勝利を勝ち取るのでしょうか!!」
「ベークマン!やっちまえ!!」
「ジークファイト!」
「アゴーニ!頑張れよ!!」
「カナ!ジークさん、アランさん!頑張って!!」
観客席から各選手を応援する声が聞こえてくる。最後のはマリーの声だ。
「それじゃあ決勝頑張ろう、ジーク、アラン。」
「うん!」
「おう!」
「それでは決勝戦、始め!」
開始の合図と共に、アランとベークマンが一斉に飛び出す。
ガキィィンン!!
重い金属のぶつかる音がする。
キーン!ブォン!カキンッ!!
そのままアランとベークマンの剣戟が繰り広げられる。かなり拮抗しているが、真正面からの力勝負である分馬力の低めなアランがやや押されている。
その間、ベークマンの後ろの2人はただ見ているだけだ。ここで動かないのは、今までベークマンに任せ切りだった弊害と言えよう。ベークマンを攻撃しようとするとアランを巻き込むし、2人だけでも先に潰しておこうと私は例によって"洪水"を起こす。しかし…
「うわあ!」
「ぼーとしてんじゃねえ!!」
「ベルナール選手の『洪水』だ!しかし避けられてしまった!どうなっている!?」
アランと戦っているはずのベークマンがそのまま魔法を発動し、2人の足場の地面を2mほど盛り上げて"洪水"から逃がす。しかもアランとの戦いに乱れはない。他の選手かもと思ったが、様子を見る限り違いそうだ。ノーモーションで瞬時に魔法発動か、化け物め。
ガキィィィンン!!!
「クソっ!!」
ここでアランがベークマンの大剣に押し負けてしまった。そしてベークマンはそのまま大剣を振り上げアランにさらに一撃を加えようとする。
「アラン!」
ここでジークが飛び出す。
ゴォォォン!!
「うっ!」
ベークマンの一太刀を何とかジークが受け止めた。
キィィィン!!
そのままベークマンの大剣をうまく弾き、弱っているアランを回収して後退する。
「逃げてばっかでなんだよその程度か!?これは避けられねえだろ!おらあ!!」
「ベークマン選手の準決勝で見せた一撃必殺の地面の大波が炸裂!!A組どうする!!」
追い打ちをかけるように間髪入れずに攻撃してくる。ここまでか……
「なっ!?」
「今度はどうした!?」
……と思うにはまだ早い。
「なんとジーク選手、風魔法でA組3人を空中に浮かせて逃がした!!そんなことができたのか!?」
「ナイス、ジーク」
「へへっ!!」
これがジークの「奥の手」である。ジークは自身の魔力と支援向けの極光傾向、そして才能と努力の結果、複数の人間を空中に浮かせて留まらせることに成功した。まだそのまま動かしたりは出来ないが、練習すればそのうちできるようになるだろう。
ベークマンの魔法が収まり、ジークの魔法も解除されて地面に降りる。
「…ハハハッ!!それくらいじゃないと面白くねえよな!!でも状況は何も変わっちゃいねえ!」
それはごもっともだ。と思いつつ私からベークマンまで遮蔽物がないこの状況、攻撃のチャンスだと思い攻撃する。
「ウォーターショット」
バシャン!!
私の攻撃は見事にベークマンにヒットするが、軽くガードされてしまう。
「今度はてめえかベルナール!!今までの試合見てたが、お前剣じゃ戦えないんだろ、違うか!?」
そういうとベークマンが私に目掛けて突進してくる。
「カナ!!」
ベークマンは私が今まで剣を1度も使わなかったことから、剣で戦えないと考えたようだ。
「くたばれ!!」
まあ必ずしも間違いではないが…
…… "戦わない" ことと "戦えない" ことは、同義ではないだろう?
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