第10話 人形からの解放

そうこうしているうちにミサキとリックを乗せた車はオークション会場についた。

リックはミサキに手を引かれ、車から降ろされる。


「またね、リック。あとでまた飲みましょう。今度は普通の恰好をしてきてね?じゃあね」

「うぅ…」


リックはミサキの言葉にマスクの中で赤面した。

ミサキは次の仕事があるとのことで再び車に乗りこみ、車を出した。


(借りを作ってしまったな。うぐ!とりあえずこれを脱がしてもらわないと…)


リックはプラグの刺激にプルプルお尻を震わせながらオーナー室に向かっていった。

そこにはソラと今日は着ぐるみを着ていないオーナーのエアリーがいた。


するとソラが心配そうな顔をしてリックに近寄ってきた。


「リック!ごめんね!私の力不足のせいで助けられなくって…でもよかった、帰ってきてくれて…」


ソラはリックが無事に帰ってきたことに安堵の表情を浮かべた。

あとソラの目元が少し赤くなっていた。


(俺こそごめん。こんな無茶な作戦が悪かったんだ。こんなに心配かけて…)


そんな二人の間にエアリーが割って入ってくる。


「リック君、どうだった?ゴム人形で丸一日過ごした感想は?ん?」


リックをからかうように煽ってくるエアリーにリックはかなりイラっとしたが、助けてもらった手前、強く出ることができない。

そんなエアリーに怒ったのはなんとソラだった。


「エアリーさん!はやく脱がしてあげてください!こんな変態みたいな恰好のままなんて可哀そうです!鍵を貸してください!はやく!」


普段はひょうひょうとしているエアリーも、普段滅多に怒らないソラの剣幕に気圧され珍しく慌てふためいていた。

ソラが怒ってくれる気持ちはありがたいのだが"変態みたいな恰好"のゴム人形に入れられている今の状況はかなり恥ずかしかった。


「ちょ、ちょっと待って!鍵はっと…コレコレ!はい!シャワー室を貸すからそこで着替えてくるといいよ」


エアリーはソラに鍵を手渡した。

そしてソラはリックの手を引き一緒にシャワー室へと向かう。

リックは慣れないハイヒールとプラグの刺激のせいでゆっくりとしか歩けない。

しかもシャワー室は上の階にあり、階段を上らなければならない。

そのせいで余計にぐいぐいとプラグに刺激されてしまい、リックは途中で立ち止まってしまった。


「ふぅ…ふぅ…うぐ!」

「リック?大丈夫?どこか痛むの?」


ソラが心配そうな顔を向ける。

リックはビクビク震えながら首を横に振ってまた一緒に歩きだす。


(やばい…ソラの前で…うっ!それだけは…)


プラグのスイッチが故障してからずっと前立腺を責められ続けているリックは少しの刺激でイってしまいそうなのだ。

それにソラにはプラグのことは話していない。

悟られるわけにはいかないのだ。


なんとかシャワー室についた。

リックが部屋に入ろうとするとソラまで一緒になって入ろうとしてきた。


(ちょっと待てソラ!一人でできるって!)


リックはソラの両肩を掴み、シャワー室から追い出そうとするがソラはなぜか一歩も引かない。


「だめだよ、そんな手じゃ一人で脱げないでしょ?着ぐるみの鍵も開けられないし。ね?」


確かにソラの言う通りだが、リックは汗…いや、体液まみれの体を見られるのが嫌なのだ。

首を何回も横に振り拒否するがソラは一向にひかない。

リックは諦めてソラに手伝ってもらうことにした。


リックはソラに背中を向け、ウィッグをミトンの手でかき分ける。

ソラが着ぐるみのスライダーに鍵を差し込み、回す。

カチ!という開錠音、ジ~っとスライダーを下していく。

リックは一気に自分の手でマスクを顔から引きはがした。


「ぶは!はぁ…はぁ…ふぅぅ…」


床に人形内に溜まっていた体液がベトっと垂れ落ちる。

シャワー室の中がすぐにリックの蒸れた体液とゴムが混ざった匂いでいっぱいになってしまった。

そんなリックの蒸れ蒸れの姿を見てソラは顔を真っ赤にしていた。


「た…大変だったんだね!今すぐ脱がせてあげるからね!」


腰まで脱ぎかけたゴム人形に手をかけるソラ。

リックはその手をがしっと掴み、首を横に振った。


「え?」

「ごめん…後ろ向いててくれないか?マリンに色々されて…見られたくないんだ」

「いろいろ………!!!」


ソラは"いろいろ"を想像してしまい、耳まで真っ赤になっていた。

慌てて脱ぎかけのゴム人形から手を放した。


「わかったよ!うん!えっと…もう一人で脱げるよね!?わたし外で待ってるよ!じゃ…じゃあごゆっくり!」


そう言ってソラは駆け足でシャワー室から出て行った。

リックはソラに大変になっているところを見られなくてすみ、大きく息を吐いた。


(ふぅぅぅ…よし)


リックは一気にゴム人形を膝まで下す。

股間に溜まっていたリックの精液がびちゃっ!と音を立てて床に落ちる。

強烈な匂いがする。


リックはその匂いに顔を歪めながらもゴム人形を脱ぎ去った。

そして四つん這いになり自分の右手をお尻にやる。

下唇を思いっきり噛みしめ、眉間に深いしわを寄せる。


「はぁ…はぁ…んぐ…うぅ…んぐぅ!」


ヌポン!じゅる…


リックの肛門からあの忌々しいプラグが抜き取られた。

抜いた刺激のせいからか、リックはアソコからだらしなく精液をたらしてしまっていた。



一方そのころ。

オークション会場のある一室。

エアリーとあのマリンがなにやら話し込んでいた。


「マリン嬢?いつお金を返してくれるの?結構貸してると思うんだけど?」

「ですからその…あの…なんとかしますので今回は帰らせてくださいますか?お人形さんが家におりまして…」

「それは知ってる。なんせウチがそれも貸し出してるんだからね」


どうやらマリンの借金についての話らしい。

マリンは自分の趣味、いや性的な遊びのために所属している議会から金を横領したうえに、オークション側からも借金をしている。

そしてマリンはそのゴム人形がもう自分の家からいなくなっていることも知らない。


外では凛とした立ち振る舞いをしているマリンもエアリーには全く頭が上がらずたじたじなのだ。

そんなマリンを見てエアリーは何か悪いことを思いついたようにニタっと笑った。


「あのさぁ…借金、チャラにしてあげよっか?」

「え…本当ですか!?」


俯いていたマリンの顔がパッと明るくなる。

そんなマリンの表情の変化を見てエアリーはまたニチャっと気味悪く笑ったあと、爽やかな笑顔をマリンに向ける。


「うん♪そのかわりちょっとした"お仕事"してもらおうと思うんだけど、いいかな?」

「やります!やります!やらせてください!何のお仕事でしょうか?」


乗り気なマリンにエアリーは質問を投げる。


「その前に聞いておきたいんだけど、マリン嬢は自分でラバーの衣装を着たり、ラバードールになったりする趣味はないのかい?」

「いえ、それは全くありませんね。あんな恥ずかしい恰好したくありませんので。私はお人形を辱めるのが好きなんです」

「じゃあマリン嬢はS寄りの人間なんだ」

「はい。お人形の中の人がこんな非力な私にいいように…性欲までコントロールされていると思うだけで…あぁ!ゾクゾクしてしまいます!」


マリンは自分の性癖を説明しながら恍惚とした笑みを浮かべていた。

その異常な性癖を確認したエアリーは俯きながら顔を手で覆い隠し、顔を酷く歪めて悪魔のように笑っていた。



それからさらに数十分後。

汚い体を洗い流し、さっぱりしたリックは今度はちゃんとした服を着てソラと一緒にオーナー室に向かった。

リックの手にはあの変態ゴム人形セットがある。


オーナー室に入るとなにやらご機嫌のエアリーがいた。

「シャワー貸してもらってありがとう。で、これはどうすればいい?」


リックがゴム人形セットを指さす。

エアリーはそれを見てさらにウキウキになり、リックからゴム人形セットを貰い受ける。


「うん♪これは今から使うから返してもらうよ」

「今から…あぁ」


さっきから鼻歌まで歌っているエアリーを見て何かろくでもないことを企んでいると察したリックはそれ以上は聞きださなかった。

しかしソラは好奇心からなのかエアリーに聞いてしまう。


「何に使うんですか?」

「ん?それはもちろん誰かに着てもらうためだよ?」

「え?誰にですか!もしかしてエアリーさんが!?」

「さ~て?誰だろうね?ふふふ♪」


エアリーはゴム人形を広げてニタニタ笑っている。

そんなエアリーを見てソラは顔を赤くし、リックは大きなため息をつくのだった。

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