第9話 真相
マリンは腰を下ろし、リックに手を差し伸べる。
顔は険しいままだった。
「リック、立って?今すぐここを出るわよ」
「ふぅ…ふぅ…うぐ…!?」
(え!?なんで俺の名前を知って…え…え!?)
リックはマリン?に手を引かれ、なんとかその場に立ち上がる。
マリンはリックの手を引いて書斎をでると、堂々と玄関まで一直線に向かう。
(まっ…まってくれ!あぐ!歩けな…いっ!)
リックはハイヒールのせいもあるが、イった直後であり、未だにプラグが振動しているため速く歩くことができない。
その場でビクビク立ち止まってイヤイヤするリックに対してマリンは大きくため息をついた。
「ふぅ…ふぅ…んぐぅ…」
「ぐずぐずしないで?さっさといくわよ」
そんなリックをお構いなしに、この異様な光景をマリン邸内の色んな人に見られながらマリンは玄関までスタスタと歩く。
辺りはもう夜で真っ暗になりつつある。
外に出ようとすると、もちろん門番に声をかけられるのだった。
「マリン様!また外出なさるのですか?あと、さすがに外ではまずいかと…」
門番もマリンの秘密の趣味のことは知っているようだし、この光景を誰かに見られることもまずいとは思っているらしい。
そんな門番にマリンはさわやかな顔でニコっと微笑みかける。
「大丈夫ですよ。もう夜ですし近寄らないと見えません。それに今日はお外でこのお人形さんと遊びたくて…そこをどいていただけますか?」
「しかし…」
「どいてくださるかしら?」
「はっ!失礼しました!」
門番は雇い主であるマリンの言葉に従うしかなく、マリンに道を譲る。
そしてマリンは車の後部座席にリックを押し込み、車を発車させた。
そのときにプラグがグッと押し込まれてしまい、皮肉にもリックはまた悶絶させられるのだった。
(あぐ!うぅぅ…よくわからないけど外に出れた…でもこれからどうなるんだ?もっとヤバいところに連れてかれるのか?)
新たな不安に苛まれ、ビクビクと震えるリック。
プラグの刺激を逃がそうとお尻をモジモジさせていたらマリンが声をかけてきた。
「エアリーさんからの依頼でね、貴方を早めに引き取ることになったわ。ソラさんと通信できるかしら?」
「むぐ?うぅぅ…」
どうやらマリンはエアリーとソラとの関係も知っているようだ。
かなりまずい状況になっていると感じ、リックはその指示を無視した。
するとマリンは大きなため息をついた後、顔を手で覆い、なんと自分の顔を引きはがしてしまったではないか。
リックは思わずのその恐ろしい光景を見せられてのけぞってしまう。
(うわ!?え…え!?)
マリンと思っていた人物はなんと別の女性の顔になっていた。
リックの知り合いで元女スパイ、現探偵仲間の一人であるミサキだったのだ。
「もう、感が悪いわね。ソラさんと通信して?心配してるでしょ?」
「むぐ!」
リックは慌てて胸のブローチを押し込む。
ミサキは耳に何かイヤホンのようなものを差し込んだ。
『リック!?今どうなってるの!凄い速度でアイコンが動いてるよ!大丈夫なの!?』
「ソラさんね。今オークション会場に向かってるわ。取りあえずリックは無事よ。貴女もそこに向かって」
『だれ?もしかしてミサキさん!?なんで?』
「話はエアリーさんから聞いて。あと貴女たちの無線、簡単に傍受できちゃうわ。ちゃんとした方がいいかもね」
『傍受?あっ…ごめんなさい。対策します』
「じゃあ、また後で。リック、通信を切って」
「うぅぅ」
『ちょっと待っ…』
リックはブローチから手を放した。
ソラが何やら喋りかけていたが。
その後、車内でミサキに現在の状況を説明されるリック。
状況はこうだ。
リックがマリン邸に搬入された日にマリンの不正の証拠を掴んだことはオークションのオーナー、エアリーにも把握されていたらしい。
それは先ほどミサキが指摘した無線の傍受によってとのこと。
この時点でリックの探偵としての仕事は終わっていて、あとはマリン邸から逃げ出すだけの状態だった。
エアリーは初めから元女スパイのミサキを使ってリックを助け出す予定だった。
しかしこんな短時間ではつまらない、もっとリックに自分がデザインしたゴム人形を堪能してもらおうとして救出日を今日にずらしたらしい。
この説明を聞き、リックは怒りに打ち震えていた。
(そんな理由で…!俺はあんな辱めを受けたんだぞ!エアリーめ!まぁ助けてもらってことはありがたいが…)
それと今日のタイミングでマリンが何者かに呼び出されたのもエアリーの差し金。
どうやらマリンは所属している議会からお金を横領しているに飽き足らず、オークション側にも借金をしているらしい。
オーナーのエアリーに呼び出されたとなれば、マリンは無条件で駆け付けなければならない。
そしてマリンが不在になった今、マリンに変装したミサキがリックを救出。
あとはエアリーが持っている着ぐるみの専用の鍵でもってリックをゴム人形から出せば作戦は成功なのだ。
つまりリックはゴム人形になったその時からエアリーの手の中で転がされていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます