第4話 証拠確保 脱出へ

話は現在に戻り、マリンの書斎。

リックは自分を覆うゴム人形の恥辱に耐え忍んでいた。


(あぐ…まさかこんな恥ずかしい着ぐるみを着せられるとは。しかもお尻にプラグまで!こんなの本当に必要だったのか?あの変態め!)


ゴム人形に入ることは確かにリックから志願したことだ。

しかし人形のデザインはマリンの好みを熟知しているオークションのオーナー、エアリーに丸投げした。

実際にマリンの食指が動き、潜入に成功できたとはいえ、やはり女性の…こんな変態みたいな恰好のゴム人形に身を包まれるのはリックにとってかなり屈辱的なのだ。

ご丁寧に着ぐるみにはチャックに鍵をかけられてしまい、専用の鍵が無いと開かないようになっている。

そのカギはこのゴム人形の所有者であるオーナーのエアリーが持っている。

しかも口を猿轡で塞がれ、まともに喋れない。


そしてなによりも屈辱的なのが肛門のプラグ。

プラグのリモコンはマリンの手に握られており、マリンの気分次第でリックは好きなようにされてしまうのだ。


(まぁいい。マリンがいない今がチャンスだ。ふん!)


リックはマスクの内側に付けられた猿轡をグッと噛みしめた。

スル!っという音とともにリックの体を拘束していたワイヤーがパッケージ内に入り、リックは自由に動けるようになった。

そしてパッケージの前蓋が横端の蝶番を支点にパカっと開く。

リックはそれを手で押してパッケージから出てきた。


(とっとっと!くぅ…やっぱり歩きずらいな。それに歩くとぐりぐりされて…うぐ!)


慣れない高いピンヒールを履いているせいで中々上手く歩くことができない。

先ほどまでプラグに責め立てられていたため、歩くたびに敏感になっている前立腺にプラグがぐりぐり押し込まれ、不本意ながら感じさせられてしまう。

リックはマスクの中で額から脂汗をかいていた。

それにすでにゴム人形になってから数時間がたっていることもあり、人形のなかで汗でぐちょぐちょになっていた。


(うぅ…体が変に擦られて気持ち悪い。こんな仕事早く終わらせないと)


歩くたびにゴムがこすれる音とともに、ぐちゅ!ぐちゅ!っとゴム内に溜まっている汗の音がする。

リックは肛門の刺激とゴム人形内の汗に不快感を感じながらも膝をプルプルさせ内股になりながらマリンが使っていると思われる机まで移動する。

手が手袋に覆われ、しかもミトンになっているため、手を開いたり閉じたりはできるが物を掴みにくい。

手首のゴム製のバンドのせいで手袋を外すこともできない。


(この手袋も外せるように頼んでおけばよかった。でも掴めはするか)


リックはミトンに四苦八苦しながら机の中から書類を取り出し、一つ一つ胸のブローチに仕込んでおいた小型カメラに写真を収めていた。



数分後…

リックはあらかた書類を撮影し終わり、マリンの資金の不正利用の証拠を無事ゲットできた。

漁った証拠が残らない様に元通りに書類を机の中に戻す。


(今どき紙媒体に、しかも一か所にまとめていたのが仇となったな)


綺麗に整理されていた裏帳簿にマリンの生真面目さを感じながらも、リックはここから脱出する準備を進めていた。


リックは胸のブローチのボタンをミトンに包まれている手で押し込み、相方のソラと通信をとる。

リックの耳に入っているイヤホンから声が聞こえてきた。


『リック、どう?証拠は取れたのかな?』

「むぐぅ」

『あらら…今喋れないんだったね。ま…』


リックはソラの話も聞かず、ブローチから手を離し通信を切った。


コツ…コツ…コツ…コツ…


廊下を誰かが歩く音がする。

しかもその足音は大きくなっているのだ。


(…だれか来るな。いったん戻るか)


リックはさっきまで入っていた等身大のパッケージの中に入り、苦戦しながらも前面の蓋を閉じて猿轡をグっと噛みしめた。

パッケージからワイヤーが飛び出し、リックの体を拘束する。

リックはこの部屋に搬入された時と同じようにパッケージングされた。


傍から見たらかなり落ち着いて行動しているように見えるが、リックは肩で大きく息をしており、容器とゴムの肌が小さくギチ…ギチ…と頻繁にこすれあって音を出していた。



リックがパッケージに戻って早数分…

結局書斎には誰も入ってこなかった。

息が上がっていたリックもだいぶ呼吸が穏やかになっていた。


(ふぅぅ…落ち着いて…絶対に見つかったらダメだ)


リックは再び猿轡を噛み、パッケージのワイヤーの拘束を解いて胸のブローチを押し込んだ。

ソラと再び通信がつながる。


『リック?大丈夫?さっき途中で通信が切れちゃったけど…』


無線越しにもソラの心配そうな声がする。


「むぅ」

『大丈夫ってことだよね?よかったぁ…リックのタイミングでいから慎重にね?証拠は取れたんだよね?』

「ぐむぅ」

『OK…じゃあ逃げる準備をして、私がナビするから。まぁオークションの人が回収しにくるけど、そんなに着てたくはないでしょ?その着ぐるみ』


ソラの言う通り、リックはもうこの変態的なゴム人形の着ぐるみから早く解放されたい気持ちでいっぱいだった。

マリンへのゴム人形のレンタル期間は今日を含めて4日間。

オークション関係者がその時がくれば回収しに来てくれるが、そこまで待っていられない。

その間にマリンに何をされるかもわからない…

リックは再び猿轡を噛みしめ、パッケージに自分を拘束させ、脱出できる時をうかがうのだった。

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