雷門聖也「恋愛不適合者」

1「恋愛不適合者」


【聖也視点】




俺の名前は雷門聖也(らいもんせいや)。


とある会社の社長の息子。



「聖也さん! お疲れ様です!」


「先日は相談に乗っていただき、ありがとうございました!」


「聖也さんさえ良ければ、先日のお礼がしたいので、お食事にでも...」



エレベーターを待っていると、同じくエレベーターを待っていた他の部署の男性二人が話しかけてきた。


以前、仕事のアドバイスを求めてきた二人だ。



「いいよいいよ! お礼は仕事で返してくれれば! 皆が頑張ってくれるから、雷門家は助かってるよ」



お礼に食事と言われても、後輩にご馳走になる気はない。


行ったとしても、俺が黙って先に払うつもりだ。


お金なんてどうでもいい。


生まれた時から金持ちだった俺は、使っても使ってもなくならなくて困っているくらいだ。


それよりも時間だ。


俺と一緒に食事をして後輩に気を遣わせるくらいなら、自分の趣味や、恋人、親しい友人、家族に時間を使って欲しい。



「お願いしますよ聖也さん! 僕達、聖也さんに何かお礼がしたいんです」



ここまで言われてしまったら、拒否するのも失礼か。



「わかった。それじゃあ今週の金曜日は...」


「「空けておきます!!」」



二人が声を揃えて元気な返事をする。


何故か俺は男に好かれやすい。


手帳には仕事か、男との飲みの予定ばかり。


俺が金持ちの息子だからか?


最初は誰のことも信用していなかった。


が、そんなことはもう考えなくなった。


社員は勿論、学生時代の友人、バーテンとしてバイトしていた頃の客、とにかく俺は男からの誘いが多い。


冬はスノボ、夏はバーベキュー、飲みの誘いは一年中。


会計は割り勘か、その時調子が良い奴が奢ってくれたり。


俺ばかり、ということは一切なかった。


女性との出会いが少ないわけではない。


むしろ、多い方だとは思う。


それなりにモテてきたし、それなりに経験はある。


だが、付き合うまでに発展しない。


彼女が欲しいとも思わない。


最後に彼女がいたのは9年も前になるのか。


というより、「ちゃんとした」彼女は今まで一人しかいない。


その彼女にも三ヶ月でフラれてしまったのだから、俺は恋愛に向いていない。


今が楽しければそれでよかった。


結婚願望もないし、なんの焦りもない。


そんな俺が、まさか恋愛で悩む日が再び来るなんて...。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る