22 「妹が帰ってくる」


「もう帰ります。今日体調悪かったせいか、酔いが早かったみたいで」



俺はいくつかの大胆な発言を、酔いのせいにして帰ろうとした。


マリアの連絡先が聞けただけで十分な収穫だ。


墓穴掘る前に帰ろう。



「そういえば今度の人事異動...」



俺が会計をしていると、聖也が話しかけてきた。



「沖縄から本社に聖奈が移動してくるぞ」



聖奈!


沖縄の支社にいた、聖也の妹が東京に戻ってくる!



「どこに配属されるんだ?」



俺がそう聞くと、聖也は苦笑した。



「お前の下につける。本人は嫌かもしれないが、仕事は仕事だからな」



手が震えた。


心臓がバクバクと、鼓動が大きくなったのがわかる。



「今度4人で聖奈ちゃんの歓迎会しましょうよ」



マリアは楽しそうに言った。



「それは...聖奈次第だな」



聖也は苦笑いしたままだ。



「どうして? 帝翔さんと聖奈ちゃん、昔何かあったの?」


「うちのバカ息子が、聖奈ちゃんをいじめてたのよ」



代わりに母さんが答えた。



「いじめてない」


「あんたはそう思ってても、聖奈ちゃんはいじめられてると思ってるの。受け取り側がそう思ったならイジメなの」



俺は心底傷付いた。


仲良くなりたかっただけなのに、何故こんなにも嫌われているのか。


マリアは思い出したように、「ああ!」と大きな声を上げた。



「もしかして、帝翔さんが"ダミアン"?」


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