20 「童貞否定」


俺と聖也は席に戻った。


「聖也には黙ってましたけど、実は昔彼女がいて。だから童貞ではないんですよ」



マリアに言って、童貞を否定する。


聖也が煙草に火をつけたので、母さんは目の前に灰皿を置いた。



「へえー、どんな子だったんですか?」



ど、どんな子?!


そこまでは考えてなかったな...。


身近な人をモデルにしよう。


誰かいないか?


会社の人とか...モデルにしやすい人。


困ったぞ...会社の女性の顔が全く思い出せない。



「えっと...髪は明るくて肩までの長さで...睫毛が長くて、顔は濃い方かな...水商売やってそうな格好いつもしてて...」



俺は聖也を見ながら言った。


参考に出来る身近な人間が聖也しかいなかった。



「名前は聖子ちゃん」



マリアは笑った。


そんなに面白いことを言っただろうか?



「帝翔さん、もし良かったら連絡先交換しましょう?」



やった!


夢にまで見たマリアとのライン交換!


俺はスマホを出した。


交換のやり方がわからなかったので、マリアにやってもらう。



「帝翔さんってラインのアイコン、初期設定のままなんですね」


「え? あー...まあ、気にしたことなかったな」



せっかくだし何か設定してみるか。


そう思ってスマホの画像フォルダを開いて見てみると、マリアの写真しかなかった。


ネトストしてる時に保存したものだ。


俺はスマホの画面を隠す。



「えーっと、何も写真なかった」


「普段写真撮らないんですか?」


「撮らない」



言われてみれば、カメラ機能を使った記憶がない。

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