15 「聖也の友達」

そんなことを話していると、ノーゲスだった店に、お客さんが入って来た。



「あれ? 帝翔?」



母さんが「いらっしゃいませ」を言う前に、その客は俺に声をかけた。


聖也だった。


仕事が終わって一度帰ったのか、私服姿だった。


長い襟足を後ろに結んでいて、グレーの虎柄のジャケットを羽織っている。


私服もホストみたいだが、それがまた似合う。



「帝翔、体調大丈夫か?」



会社を早退しといてバーに飲みに来ているなんて...そう怒られるかと思ったが、聖也は穏やかだった。


きっと、母親の店だから許されたのだろう。



「体調? あんたどっか悪いの?」



母さんが、一応母親らしく心配する。


体調不良は仮病だが、次の瞬間俺は本当に体調が悪くなった。


聖也は一人ではなく、女性を連れていた。


その女性というのが、あの聖(ひじり)マリアだったのだ!


マリアに気付いた俺は、真っ青になる。


何故聖也がマリアを連れているんだ?


二人は知り合い?


もしや...聖也の彼女?!



「ん? ああ...彼女はマリア」



俺の目線に気付いた聖也は、マリアを紹介する。



「か、彼女?!」


「え? ちげーよ。彼女っていうのは、この女性はって意味の彼女で...マリアは友達」


「友達って、どういう意味で友達? 普通の友達? それともセフレ的な?」



聖也の表情が一瞬で恐ろしい程冷たくなった。



「お前、くそ失礼だぞ」



本気で呆れてる目だ。



「ごめんな、マリア。こいつは俺の幼馴染の帝翔。デリカシー無いから、失礼なこと平気で言う奴なんだけど、根は悪い奴じゃないから許してやってくれ」



冷静に考えてみれば、俺はとんでもないことをマリアの前で聞いてしまった。

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