16 「ネトストの限界」


「ごめんね、うちの息子なんだけど、ほんとアホで...マリアちゃん遠慮せず、たくさん飲んでね。息子が払うから」



勝手に俺がご馳走することになっている。


別に構わないが、それはマリアと聖也の関係がわかってからだ。


他の男と付き合っている女には奢りたく無い。


しかし...今日のSNSでのつぶやきでは、「彼氏はいない」と言っていたはず。


彼氏ではなくても、セフレかもしれない。


まだその件について否定はされてない。



「俺達、全然そういうのじゃねーから。マリアは俺の妹の友達で」



俺の疑いを察したのか、聖也は説明してくれた。



「高2の時に聖也さんの妹...聖奈ちゃんとクラスが一緒で。それからずっと聖奈ちゃんと仲良しなんです」



マリアが美しい声で言う。


高2の時ということは、俺が大学1年の頃だ。


聖奈と仲が良いだなんて...知らなかった。


SNSではそんな情報はなかった。


確かに、聖也の妹は地味で暗い性格で、顔写真をネットに上げるタイプではない。


SNSをやっていたとしても、本名ではやらなそうだ。



「妹と一緒に三人で遊ぶことが多くて...って言っても、俺は二人の金ヅルか、運転係にされてただけだけど」



まさか聖也とマリアが親しかったなんて。


灯台もと暗し。


聖也はSNSに一切興味が無い。


マリアのフォロー欄に共通の知り合いがいなかったのは、聖也がSNSのアカウントを持っていないからだ。



「聖也の女じゃないなら、好きなもの一杯どうぞ。ご馳走します」


「いいんですか? じゃあ、お言葉に甘えちゃお」



マリアは笑顔を俺に見せて、ミスティアのジンジャー割りを注文した。


聖也はアードベッグのロックとチェイサーを頼む。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る