13 「ポテチと緑ハイ」


「ナポリタン食べたい」


「あー、駄目。ナポリタンは具材切るのめんどくさい。お菓子でも食べてなさい」



そう言ってチャームのポテチを出す。


母親としても店員としても最低だ。



「今日は電車? 車?」


「電車で来たから飲める。モヒートで」


「緑茶ハイね」


「モヒートだって」


「あんたは緑茶ハイ」



モヒートはライムを切ったり、ミントを入れたり、クラッシュアイスを作ったり、作るのが面倒なカクテルだ。


わかっていて注文してるし、母さんが俺には作ってくれないこともわかっている。


他の客にはちゃんとするが、息子には雑だ。


このやりとりが好きなだけで、別にモヒートが飲みたいわけではない。


俺の前に緑茶ハイが置かれても文句はなかった。



「母さんも飲んでいいよ」



滅多にバーテンにご馳走することは無いが、今日は恋愛相談しに来たのだから、一杯くらいいいだろう。



「え? あんたがそう言うなんて珍しいわね。じゃあ白州のソーダ割りにしようかな」


「白州は高い。角ハイで」



この店では、角と白州は400円ほど値段の差がある。


全く俺の言うことを聞かない母は、白州のソーダ割りを作って俺と乾杯した。



「で? 今日は何の用? 平日に来たり、私にご馳走するなんて珍しい」



早速本題に入る。



「俺、彼女欲しいんだよ」



母親に自分から恋愛相談をする息子なんて、きっとあまりいないだろう。


母さんとは一緒に暮らしていないせいか、母親というより近所のおばちゃん感があって、何でも話しやすい。



「そうなの? あんたは父親と同じで、女嫌いかと思ったわ」

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