第3話 囚われているエルフ


「準備は必要ですが、できるだけ早めに行いましょう」

「はい」


 その後、お互いどのようにラーバン公爵家が持っている情報を入手するか打ち合わせをして一日が終わった。


 翌朝、アリスさんと一緒に情報屋へと足を運んだ。


「なんのようだ?」


 目の前にいるいかつい男性が威圧的に言ってきたため、真剣な表情で答える。


「頼みたいことがある」

「俺だって客を選ぶ。出来損ないに売る情報なんて無い」

「へ~。じゃあどうすれば認めてもらえる?」


 依頼主が指を鳴らし、後方より数人の男性が俺に向かって殴りかかって来る。


(力を見せろってことかよ‼)


 腰に掛けている剣を引き抜くと、胸の紋章が光りだして男性たちを淡々と気絶させていく。


「……。お前、本当に出来損ないか?」

「出来損ないであっているよ」


 胸の痛みに耐えながら、平然を装う。


「何が知りたい?」

「ラーバン公爵家に侵入する経路」


 先ほどまで平然を装っていた情報屋の表情が一瞬にして真顔にと変わった。


「お前からその言葉を聞くなんてな」

「それで教えてくれるのか?」

「教えてやってもいいが、高くつくぜ」


 すると、アリスさんが情報屋の目の前に、袋の中に入っている金貨を置いた。


「なぜラーバン家が住んでいる敷地の北東には警備が多いと思う?」

「?」

「あそこには抜け穴があるからだ」


 その言葉に俺たち二人は驚きを隠し切れなかった。


「日が昇り始める前、一瞬だけ北東の警備が緩む。だから抜け穴までは案内してやる。そこからはお前らでやれ」

「ありがとう」

「それでいつにする?」

「今日」


 アリスさんの言葉に俺たちは気を引き締める。


「分かった」


 そして俺たちは情報屋と集合場所をすり合わせしてこの場を後にした。



 日が沈むまで就寝をし、時間が近くなるにつれて準備を始めた。


「アリスさん、一つ聞いてもいいですか?」

「何ですか?」

「なぜ急ぐ必要があるのですか?」


 はっきり言って、情報屋に聞いた当日に行う必要はないと思う。


「それはまた今度お話します」

「……」

「すみません。ですが、まだここでは話すことはできません」

「分かりました」


 深く質問してはいけない内容だと思い、俺は了承した。


 その後、あっという間に時間になってしまい、情報屋と合流をした。


「それじゃあ、行くぞ」

「あぁ」


 俺たち二人は情報屋の後をついていくと、警備の人数が薄く、あっさりと抜け穴の場所までたどり着く。


「ここまでだ」

「ありがとう」

「別に仕事だからな。でも出来損ない、一つだけ忠告をしてやる。ラーバン家は無断で奴隷を集めていると聞いている。捕まらないように気をつけろ」


 俺たち二人は頷きながら、抜け穴の中へと入って行った。


 中は薄暗く、人ひとりが歩けるぐらいしかスペースがなかった。


(なんでここを封鎖しないんだろう?)


 公爵家である以上、危険なルートは消すべきだ。だけど消していない。それには何か理由があるはずだ。


 俺がそう思いながらも淡々と先へ進んでいくと、服の袖をつかまれる。


「止まってください」


 アリスの言う通りにすると、頭上から足音が聞こえる。


「ここでは、音一つでもばれたら終わりです」


 俺は頷きながら、より慎重に先へ進んでいく。


 十分ほど歩いたところで、やっと小さな広場にたどり着く。


(なんだここは?)


 何かを運んでいた形跡があった。


 アリスさんとアイコンタクトを送りつつ、歩き始めようとした時、女性の叫び声が聞こえた。


 俺たちはばれない範囲で出来るだけ早く声の方へ進んでいくと、そこには俺たちと同い年ぐらいの銀髪エルフが拘束をされていた。それに加え、不気味な笑みを浮かべた男性二人が立っていた。


「傷さえつけなければ何をしてもいいって言われている。今日は楽しませてもらうからな」

「ふざけないで‼」

「どこまで威勢を吐けるかな」


 男性たちがエルフの方へ近寄っていくのに対し、俺は剣を抜いた。


(なんなんだ、毎回この痛みは……)


 痛みに耐えつつ男性二人の背後を取り、一人の首を切り落とした。すると、もう一人の男性が叫びだしそうになった。


(やばい‼)


 ここで叫ばれたら確実に終わる。そう思った時、アリスさんが道具を取り出して、男性の声を封じた。


 その一瞬を見逃さず、俺はもう一人の男性を倒す。そして、エルフの拘束を外すと、安堵した表情をしながら言われる。


「助けてくれてありがとう」

「こちらこそ助けられてよかったです」

「それで、あなたたちは?」

「あ~」


 ここで正直に説明していいのか分からず、口ごもってしまう。


「私はマリア・ルーニー。エルフ国の第一王女です」


 その言葉を聞いた俺とアリスは絶句してしまった。


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出来損ない冒険者に転生した俺は、没落王女の護衛として成り上がる ~ 気が付けば常に王女が隣にいるのはなぜだ? 煙雨 @dai-612

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