第5話 ながいたびがはじまる..
一週間かけて、武器の呼び出しと貯蔵、試射を終えた。
そんな訳で、早速、脱出していきたいと思います。
装甲トレーラーを車庫から出す。
このトレーラーの荷台はトレーラーハウスになっていて、そこで休めるって訳よ。
無論、装甲板以外にも色々と改造はしている。
汚物層には謎の浄水フィルター(恐らくは異次元由来の物品)を取り付けており、掃除の回数は少なくて済むようにしているし……。
俺のコンソールコマンドで今んところエネルギー関係は軽油しか出せないので、エンジンを軽油駆動のディーゼルエンジンに取り替えてある。
ディーゼル発電機も搭載しておいた。
水は、2Lボトルのミネラルウォーターを出すIDを見つけた(00000000だった、つまり0と打てば出るのでお手軽)ので、それをストックして水道が使えるようにしてある。
トイレとシャワールームもあるぞ。
コンロは、プロパンとかのガスはまだIDが見つかっていないので、発電機を使ってのIHヒーターにしてある。
米のIDは見つかっているので、米の貯蓄は少なめ。
逆に、まだIDが見つかっていない魚などを、業務用の極低温冷凍庫に入れてある。
作業用の溶接機や電気炉も置いている。大型のPCもだ。
そして、電力消費量を少しでも減らす為、ソーラーパネルも設置させてもらった。
窓のガラスは当然のように防弾で、タイヤもわざわざ海外から取り寄せた防弾タイヤだ。
しかも、暇だったので、車体上部に機関銃も取り付けてある。
ブローニングだな。
……もう、ブローニングの弾薬をクラフトし続ける仕事はしたくない。クラフトなら時間が短縮できるとは言え、虚無感が強いからな。
刺身にタンポポを乗せる仕事かよ……。
まあそんな感じで、総評して、バカの欲張りセットみたいな有様になったこの車で……。
俺は早速、旅に出る……!
『『『『うぼぁー……!』』』』
……ガレージを閉じた。
うーん、困ったぞ。
家の前のゾンビが多過ぎる件について。
流石は東京、中野区と言えどもやはり人は多いか……。
ってか、SNS漁ったら、東京からはもうみんな脱出してるっぽいんじゃない?
東京は人口密度的に、ゾンビが多過ぎてお話にならんとか何だとか。
東京では生存がまず無理だから、東京からは逃げろ!ってのが定説らしい。東京ってか、都心?人口が多いところだな。
んー……。
中野区だから、北だな。
とりあえず、埼玉の方に逃げてみるか。
俺は、建物の二階から火炎瓶を投げた……。
さて、家の前のゾンビの掃除も済ませたことだし、さっさと移動しよう。
車を出して数分……。
「……多い!ゾンビが多過ぎる!」
思いの外、ゾンビが多くて身動きがとれない……。
スパイクがついた装甲トレーラーとはいえ、人間を何匹も轢いて移動するのは難しいもんだ。
そりゃ、一人二人なら撥ね飛ばして終わりだが、商店街を塞ぐほどにゾロゾロいるようではな……。
うーん、どうするか……。
……そうだ、これを使ってみよう。
俺は、家に戻って押し入れからあるものを取り出して、少し改造した……。
それは……、じゃん!
「中華製ドローン!」
中華から取り寄せたドローンだ!
他のものを作る時のパーツ取り用に買ったおもちゃなんだが、予備で買ったのが残ってたぜ。
これに、小型のスピーカーを取り付けて……。
音楽を爆音で流しつつ、空を飛ばして、ゾンビを誘導する!
これでどうよ?!
音楽?肩を赤く塗ったロボットの特殊部隊のマーチだよ。
ゾンビの誘引は……、おお、結構上手くいくもんだ。
かなりの数のゾンビを、国道につながる大通りからどかせられた。
じゃああとは、単純に数を増やすか。
ジャンク品置き場のゴミパーツから、ラジコンやらドローンやらをでっち上げて、それを総動員してゾンビを退かす。
それに、日が暮れてくるとゾンビは室内に戻っていくようだった。
ああ、忘れていたがそんな設定もあったな。
生前の記憶がある……訳じゃないんだが、生きていた頃の記録を元に、それっぽい行動をとる、と。
これは、ゾンビウイルスが寄生虫のように宿主を操っているってことだな。
ほら、知ってるだろ?カタツムリのツノに寄生する極彩色の寄生虫とかさ。カマキリのケツにいるハリガネムシでも通じるか?
あれ、宿主を操って、寄生虫の都合がいいように行動させるじゃん?
それと一緒で、ゾンビに生前と同じような行動をさせることで、生前に関わっていた人のところにゾンビを運んで、感染を拡大させようとしてる訳だ。
だから、夜中になると室内……自分の家に戻ろうとするってことよ。
ドローンの囮効果と、夜のゾンビの習性で空いた大通りに、トレーラーを突っ込ませる……。
……割とあっさり、国道に出られた。
一度速度が乗ると、十数トン単位の質量物であるトレーラーは強かった。
少しくらいゾンビが出ても踏み潰し撥ね飛ばして走破する。
ガキのゾンビとか女のゾンビとかも潰したが、まあ、うん。
特に思うことはなかったな。
『体質:サイコパス』のせいだろう。
何だかよく分からないが、この体質なるものが生まれた時からステータスの端にあった。
俺は俺本人のことを温かみに満ちた優しい人間だと思っているが、ステータス上はそうなっているらしい。
かなしいね。
他にも、体質というのはあるらしく、俺には『体質:巨体』『体質:鋼の肉体』『体質:超代謝』とフィジカルが丈夫!というものがある。
因みに……、目が悪い人のステータスを見れば『体質:近眼』などが出てくるし、アル中を見れば『体質:アルコール依存症』と出てくる。
相手の内面は分からないが、少なくとも、名前とステータスはわかる訳だな。ただ、ステータスを見るのは、その対象に触っている間のみ可能みたいな感じだった。
ついでに言うと、IDも見れない。killコマンドで遠隔暗殺!とかは無理っぽいんだよな……。
ID.findとコマンドを打ったこともあるが、それをやると人間の許容量以上の情報が脳に流し込まれ、知恵熱を出してぶっ倒れた経験がある。
だから俺は、アイテム追加以外に迂闊なコマンドを打てないでいる。
やだよ俺、自分のチートの使い方間違って死亡!とか。
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