ドライブイン安土 飛躍1-2

 現在の事をもう少し話そう。まず、祝言の事を心から祝福してくれてそうだったのが、明智光秀と滝川一益この2人だ。

 明智に関してはまぁ、もう知ってる間柄というのもあるだろう。ならば、何故、滝川一益!?と思うだろう。それが・・・


 「お主が甲賀を面倒見ると聞いた時はどこの馬の骨かと思うたぞ?変な奴ならば叩き斬って、捻り潰して、伊勢の海に沈めてやろうと思っておったのだがな」


 オレから見た滝川一益の第一印象・・・。バリ怖い。まず、叩き潰されるだけじゃなく、捻り潰そうともするらしい。そして、伊勢の海にポイって・・・。もう勘弁してください!

 それが、どういう風の吹き回しか、この滝川一益。なんと甲賀出身だというのだ。

 しかも、ノッブパパの時代、六角家全盛期の六角定頼時代の時に最も信頼の厚かった甲賀の忍の一家の一つが滝川さんのお父さんやお爺ちゃんらしい。

 しかもその信頼の厚かった家は甲賀21家と言われ、滝川一族はその中でも筆頭とまで言われた、エリート中のエリートなのだそうだ。


 ならば、その滝川が自分で『甲賀を治める名乗りを上げても良かったんじゃない?』とオレは思ったが、『武勇に優れ、諜報活動を得意とする部隊を要しても内政は他の者とそう変わらないのだ』と、自分で言っていた。


 まぁそこで、オレが名乗りを上げた訳だが、それ以前に例のおっさんの事件の次の日には太郎君、次郎君を通して直ぐに甲賀に米300キロ、砂糖100キロ、塩100キロ、梅干し200パック、レトルト食品、缶詰などなど、相当数・・・。いや、めちゃくちゃな数を無償で提供したのだ。

 ちゃんと食べ方も清さんにイラスト付きで書いてもらって、コピー機で量産して丁寧に折り曲げて入れた。

 2人はオレが作った握りを食べ、スーパー強化された身体だろうが、10往復以上し、流石に息切れしていた。それでも2人は笑顔で物資を運んでいた。

 振り分けは誰がどうとか言わず、かつてどんな活躍をしていた!とか言う人だろうが均等だ。

 その成果があってか、この滝川さんはオレの事を情の厚い男と思ってくれたおかげで、オレを認めてくれた?のだ。


 あっ、そうそう!近々一度、オレも甲賀に向かう事とはなったのだ。そこで、それ以前にオレの足・・・。つまり原付だが、とんでもない姿で戻ってきた。


 「尊ッ!!!これは壊れておる!道中でいきなり走らなくなった!直せ!」


 信長と店に戻った時に言われた言葉だ。オレの原付は無惨な姿となっていた。まず、後ろのタイヤがパンクして、車体はかなりの擦り傷。ヘルメットに関しては・・・


 「兜は無くしてしまった。許せ」


 うん。信長さん曰く、ヘルメットは兜と認識したようだ。

 もういいわ。怒る怒らない以前の問題だ。どうせこのような事になるのはなんとなく思っていたし。

 この時、信長の小姓の遠藤さんって人が教えてくれたのだが・・・


 「天王寺砦にて、お館様が御自身の突入時を再現すると申しまして・・・。松永殿や若江衆等に自慢していた所・・・たいやなる物から音が鳴り、一瞬、敵方の鉄砲かと思いましたが、この原付なる物が動かなくなった次第でございます」


 と、教えてくれた。何してんだよ!?これが素直な感想だ。直せたとしても、どうせ没収されるならオレは金稼いで軽トラを購入してやる!


 そして、太郎君や次郎君の輸送が済むと、次の日に、太郎君達より少し若い、中学生くらいの男女3人が来たのだ。どうもこの子達はそろそろ里から出る予定だったらしいのだが、『どうせどこかの有力者に仕えるなら、飯を食べさせてくれたオレの直属になりたい』と言ってきたのだ。

 オレは否応なしに了承したのだが、いかんせんこの子達は・・・


 「ありがとうございます!俺は名前は五郎と申します!」


 「私は吉と言います!」「私は滝と言います!」


 「「「よろしく、お願い致します!」」」


 「任務は何でしょうか!?敵を撹乱させるのは俺は1番得意です!」


 「私は拷問が得意です!」


 「私は毒の精製が得意です。甲賀に伝わる秘伝書皆伝を持っています!」


 「え!?戦ではないのですか・・・」


 「「えぇ〜・・・・」」


 このようにかなり好戦的なのだ。元気が有り余っているようだか、五郎君の方はとりあえず太郎君の与力という事にして、吉ちゃんは桜ちゃんの与力、滝ちゃんは梅ちゃんの与力という事にして、出店隊を作ったのだ。


 メニューは今の所は、お握り、サンドイッチだけだ。佐和山城下だけではなく、琵琶湖の宿場町でもある大津と、この山を超えた安土に出店するようにした。

 信長からの許可もちゃんと得ている。金額の方はかなり考えた。考えた結果、全て一律の10文。


 これは庶民からすれば高いだろう。それは分かってはいるが、そもそもの庶民は未だ物々交換をしている人達が多い。宿場町や普請組の人達は給料を貰っているから金払いは良い。が、庶民の人達も頑張ればお金でも買える。だが、金がない人でも物々交換でも渡してあげる事にしたのだ。

 

 金は必要だ。必要だけど、そこまで必死になって稼がないといけないか?と言われれば違う。そりゃ、信長に借金はあるし、結納金は丹羽さんにそのまま渡したし、甲賀の人達の物資のお金も必要だけど、信長がでかい仕事をくれたのだ。


 「情勢が落ち着けば、京の公家連中に貴様を披露する。今生味わった事のない飯を振る舞ってやれ。前金だ。(ドスンッ ドスンッ)」


 と、まだ請け負っていない仕事なのに、お金を先にくれたのだ。200貫も。

 この人のお金の価値観が分からない。借金だって、このお金で返そうとしたのだが、


 「これはたちまちの金として使え。ワシへの借金は貴様が稼いだ銭で返せ」


 と言われたのだ。つまり返させるつもりがないという事だと思う。これも何か意味があるのか、それとも信長がオレを縛り付けさせるためなのかは分からないが、返せとも言って来ないし。


 兎に角今は、皆が皆、仕事を回し、オレを周知させる事が先決だと思い・・・


  「いらっしゃいませ〜」


 「「「いらっしゃいませッ!!」」」


 「おぅ!しゃぁ〜せぇ〜!!」


 と、今に至る。


 「おはようございます。尊様。朝の出店班の支度ができました」


 「出店2番隊も同じく」


 「3番隊も同じく」


 「了解!じゃあ今日は太郎君達が大津の方に、桜ちゃん達は安土に、梅ちゃん達は佐和山城下に!くれぐれも気を付けるように!」


 「「「はっ!」」」


 「次郎君、慶次さん、清さんはお店を頑張りましょう!次郎君!さっそく注文だ!肉うどん一つ、ラーメン一つ!」


 「はっ!」


 店の方は店の方で、行商人達の間で少し有名になってきているらしい。何人かではあるけど、例の近江商人の紹介で来たって人も居る。


 この仕事が終われば・・・。いや、今日という日が終われば・・・オレは・・・。


 「尊さま!」


 「清さん・・・オレ・・・」


 「クァ〜。まったく・・・朝っぱらから変な惚気のような顔は辞めてくれ!(プカー)」


 「すいません!」


 今日、オレは初めて清さんと寝床を同じにするのだ。仕事は山積みだ。安土城 二の丸の案。てるさんと源三郎さんの出迎えと家のこと、それに薬屋の事などなど・・・。だが、今日という今日はそれどころではない。

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