竜の歌声

 いつか最高の楽器を作ってみせる、力強くそう言ってのける彼女のなんと眩しい事だろう。自分からはとうに失せた熱量だ。挫折する事を知らないその情熱と猛々しさを年老いた赤竜は心底から好ましく思った。

「では俺の骨でひとつ作ってみるか?」

 弾かれたように彼女が振り向く。

「あと数年で俺は死ぬから。そうしたら俺の骨で作るがいい。俺は歌が下手だから死後は綺麗な声で歌いたいのだ」

 言い切る頃には、とうに覚悟が出来ていた。

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