裏11項 夜のご奉仕の時間です。


 夕食のとき、ルーク様に給仕のお礼を言われた。

 

 ルーク様には給仕よりも給餌の方がお似合いよね、とか考えていたら声をかけられたのでビックリしてしまった。


 驚きが顔に出てしまったみたいで、ルーク様は少し寂しそうな顔をしていた。


 ごめんね。


 そして、ルーク様の態度にもっとビックリしていたのは、ルーク様のご家族だった。


 ルーク様への期待値が低すぎる。

 なんでだろ?


 この環境も成長に影響しているのかな。


 クラム家では、ご家族の1人1人に専属メイドがつく。

 そのため、給仕の時間は、メイド同士も食器等をもって慌ただしく行き違う。メイド同士の戦場だ。


 その際に、ご当主様づきメイドのマリーさんとうまくすれ違えずにぶつかってしまった。

 すぐに謝ったが、フンという感じで返事をしてもらえなかった。


 夕食の後は、メイド長さんに呼び出された。なんの用事だろう。さっきのマリーさんのことかな。


 すると、メイド長は夜のご奉仕についてレクチャーしてくれると言うのだ。

 

 よ、よ、夜のご奉仕……。


 未経験のわたしにはどう考えても無理だろう。

 メイド界では、こーいうの普通なの?

 

 どうやら、今までは子供なので免除されていただけらしい。でも、これ、男性のご主人様についたメイドは、ハズレってことだよね?


 メイド長(三角メガネ)がいう。

 「毎日という訳ではありません。求められた時だけでいいのです。それに、メリットもあるのですよ。頑張れば、ご主人様が格段に優しくなります」


 いやぁ、うちのご主人様、もとからわたしには優しいし。


 メイド長が実演する。

 まず、ご主人様の前に跪き、左手で髪(姫毛のあたり)をかきあげる(ここポイントらしい)。

 そして、ご主人様のズボンの前を開け、右手をマイクを持つように添え……。


 むーりーだー!!

 むり!むり!


 お腹ちょんぱ逃れたら、こんな未来が待っていたとは。


 わたしは、断固、無理と伝えた。

 すると、メイド長はため息をついて。

 

 「なら、身体を使いなさい。それなら、相手に任せればいいだけです。避妊だけは気をつけること。そのうち、楽しみになってきますよ」


 いやいやいや。ないでしょ。


 想像してみる。

 恥ずかしすぎる。無理。


 そうこうしてるうちに、就寝の時間になる。


 メイド長はポンッとわたしの背中を押した。

 振り返ると、柄にもなくウィンクをしている。


 こわい。確固たる意志を感じる。

 

 わたしが逃げないようにメイド長がルーク様の部屋までついてきてくれるらしい。


 ネグリジェで廊下を歩く。

 これが噂の夜のメイド服か……。


 逃げないように、完全にマークされている。

 

 寝室のドアが開くと、メイド長にブラを外され、ドンッと部屋に放り込まれてしまった。


 いてて。


 前を向くと、ルーク様がこっちを見ている。

 

 メイド長。メイド長。

 なんかドン引きされているような気がするんですが?


 えーい。もうなるようになれ。


 「ちょっとの間だけ、向こう向いていてください」


 わたしはメイド長の言い付け通りに下も脱いだ。そして、ルーク様に見られる前に布団に潜り込む。


 「ルーク様。ルーク様。こっちを向いてもいいですよ。でも、目を閉じてください」


 ルーク様に目を閉じさせる。

 これは、ねんねんころり作戦だ。


 後ろから抱きついて、ルーク様を寝かしつけて切り抜けるしかない!!


 ルーク様はアホだから、目を瞑れば秒で寝る。

 わたしは知っている。


 ルーク様に抱きついたら、汗っぽいような甘いような、不思議な匂いがする。


 さりげにクンクンしてみる。

 これが男の人の匂いかぁ。

 なんだか、落ち着く。


 クンクン。

 クン。



 ……トゥンク。

 


 気づいたら寝ていたみたい。


 夢を見た。

 

 ルーク様と世界中を冒険する夢。


 わたしは、葵色の紋が入った白いローブを着ている。

 ルーク様は宝石が入った剣を背中に装備し、広場で片膝をついている。


 周りには沢山の子供達。

 ルーク様とわたしは笑顔だ。


 わたしの千里眼は封印されている。

 だから、これは本当にただの夢。




★今回のお話しの表側★

「第11項 夜伽の時間です」

https://kakuyomu.jp/works/16818093075519809159/episodes/16818093075533035425

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