第26話 エピローグ
――一ヶ月後。帝都、宇宙艦隊基地の宇宙港。
俺たちローエングリン侯爵陣営は勝利した。
名門貴族派は多くの者が戦死し、生き残った者は逃亡か降伏した。
敵方で戦った名将メルト提督は、戦死なされたと聞いた。
敵ながら惜しい人物をなくしたと、ローエングリン侯爵は深く悲しんだそうだ。
今日、俺たちジャガー男爵領補給船団は故郷に帰る。
ウルフ先輩が、わざわざ宇宙港まで見送りに来てくれた。
宇宙港の通路を歩きながら、ウルフ先輩が俺を慰留する。
「デイビス・ジャガー。本当に帰ってしまうのか?」
「ええ。もう、一生分働いた気分ですよ」
「しかし、もったいないな。デイビスの活躍はローエングリン侯爵閣下もお認めになった。大佐にも昇進した」
ローエングリン侯爵は、将兵に昇進とボーナスを振る舞った。
全員が一階級昇進。
特に活躍した者は、二階級特進だ。
俺は活躍が認められ少佐から大佐に昇進した。
「生きたまま二階級特進ですからね。田舎貴族の自分が大佐になるとは、思いませんでした」
「デイビスが望めば、補給部隊から戦闘部隊に配属転換が可能だ。俺の部下でも良いし、独立部隊でも良い。俺だけじゃない! ティーゲルもアイアンもお前のことを認めているんだ! 一緒にやろう!」
嬉しいことにウルフ先輩は、熱心に誘ってくれる。
「いや、俺は戦闘部隊より補給部隊の方があってますよ」
「補給部隊で大佐なら補給基地司令になれるぞ!」
「あははは! ガラじゃないですよ!」
ローエングリン侯爵にも誘われたのだ。
部下にならないかと……。
嬉しかった。
光り輝く帝国の新星。
今や帝国一の実力者となったローエングリン侯爵に誘われたのだ。
足が震えた。
だが、俺はローエングリン侯爵の誘いを辞退した。
『故郷に年老いた父がおります。それに私を待っている領民たちがいます。私は帰らなければなりません』
『そうか……。ジャガー男爵令息は、跡取りであったな。で、あれば、無理には引き止められぬか……残念だ!』
『申し訳ありません』
『気にするな。また、何かあったら手伝ってくれ。故郷に帰って父上に孝行をするとよい』
帝都に来た。
戦った。
勝利し出世した。
だが、俺の居場所はジャガー男爵領にあるのだ。
内乱で活躍したことは、若き日の想い出として大切にしよう。
ローエングリン侯爵。
ダルメシアン大佐。
フェルマー少佐。
ティーゲル提督。
アイアン提督。
そして、実の兄のようだったウルフ先輩。
みんなありがとう。
俺とウルフ先輩は、戦艦ジャガーノートの前まで来た。
戦艦ジャガーノートから、タラップが下ろされている。
ここでウルフ先輩とさよならだ。
ウルフ先輩は、とても寂しそうな顔をしている。
「デイビス・ジャガー。達者でな」
「ウルフ先輩もお元気で! そんな顔しないで下さい。また、帝都に来ますよ! ジャガイモを山ほど抱えて!」
「ふ……ふふふ……! はははは! そいつは待ち遠しいな! ジャガイモは俺の艦隊で買い上げる! 楽しみにしている!」
「ええ! 美味しいジャガイモを作りますよ! では!」
俺とウルフ先輩は、握手をして笑顔で別れた。
戦艦ジャガーノートを旗艦とする我がジャガー男爵領補給船団は、帝都の空を上昇し大気圏を抜けた。
目の前には星々の世界がある。
沢山の星が瞬いている。
俺は艦橋で指示を出した。
「戦艦ジャガーノート! 前進!」
―― 銀農伝 完 ――
◆―― 作者より ――◆
お読みいただきありがとうございました!
本作は、今話で完結です。
後ほど近況ノートに後書きを記載いたします。
よろしければ、近況ノートをお読み下さい。
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では、また、お会いしましょう!
銀農伝~オンボロ宇宙戦艦で辺境から成り上がる! 武蔵野純平 @musashino-jyunpei
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