第24話 驚かれ。次に叱られる。

 俺が乗る戦艦ジャガーノートは、単艦でウルフ先輩の艦隊に合流した。

 輸送船五隻は、他の補給部隊に合流して頑張ってもらっている。


 ウルフ先輩と映像通信がつながると、ウルフ先輩は大いに喜んでくれた。


「デイビス・ジャガー! 物凄い一撃だったな! 後輩が活躍して俺も誇らしいぞ!」


 そんなに喜んでもらうと、照れくさくなってしまう。

 だけど嬉しいよ。

 ウルフ先輩に褒められて、大きな戦果をあげたのだと実感できた。


 先ほどの戦闘は、どこかの艦が望遠映像を録画していたそうだ。

 編集した動画が、全艦に送られた。

 それもオープン回線でだ。


 戦艦ジャガーノートの活躍。

 超巨大ビーム砲アイゼンハーケンの脅威。

 味方だけでなく、敵にも知れ渡った。


 味方は鼓舞され、敵は恐怖する。

 ローエングリン侯爵は、宣伝戦も上手いじゃないか!


 俺とウルフ先輩は早速実務的な打ち合わせに入った。


 俺が超巨大ビーム砲アイゼンハーケンを放つ。

 目標の座標は、本営が設定中だ。


 そして、超巨大ビーム砲アイゼンハーケンが開けた敵戦列の穴に、ウルフ先輩の艦隊とティーゲル提督の艦隊が突撃する。


 超出力のビーム攻撃を受けたところに、怒濤のウルフに猛虎ティーゲルの殴り込み。

 こりゃ敵が気の毒に思えるよ。


「よし! 問題なさそうだな!」


「いえ、問題は一つあります!」


 ウルフ先輩が打ち合わせを終らせようとしたが、俺は待ったをかけた。

 ウルフ先輩が怪訝な顔をする。


「どうした? 問題はないと思うが……」


「回収用の艦を手配願います」


「回収? 何の?」


「本艦です」


 ウルフ先輩が、腕を組んで天井を見上げた。

 そして、何かに気が付いた。


「デイビス・ジャガー……。まさかと思うが、貴様の船に積んだアイゼンハーケンなる巨大砲は、戦艦の全エネルギーを敵にぶつけるのか?」


「ご明察、恐れ入ります」


「なっ!? それでは自爆兵器ではないか!?」


「あっ、そうッスねー」


 ウルフ先輩は、大いに驚かれた。

 次に叱られた。


「デイビス! 一体何を考えているんだ! 戦艦の全エネルギーを放つ砲を装備するとは! 無茶にもほどがあるだろう!」


 俺は何とも言えない気持ちで視線をそらす。

 視線をそらした先には、副長を始めとする艦橋の船員たちがいて、『ウルフ提督! もっと叱ってください!』とウルフ先輩を応援していた。


 裏切り者め!


 俺は悔しくなってウルフ先輩に反論する。


「でも、ウルフ先輩! アイゼンハーケンは役に立ちましたよ! 敵の奇襲を撃退したでしょう?」


「それは、そうだが……」


「それにローエングリン侯爵は、アイゼンハーケンを使った必勝の策を思いつかれました。アイゼンハーケンがあればこそですよ!」


「確かに、そうなんだが、釈然としないな。デイビスは大丈夫なのか?」


「大丈夫ですよ。電気が切れて、操船出来なくなりますが、曳航艦がいれば大丈夫ですよ」


「しかし、危険が大きい。事故が起るかもしれない。ローエングリン侯爵に意見具申して作戦を延期しよう。その間に、エネルギーの問題を解決して――」


「いや、やりましょう」


 俺はウルフ先輩の申し出をきっぱりと断った。


 ウルフ先輩は、俺を気遣ってくれる。

 気遣ってくれるのは嬉しいが、今はチャンスなのだ。


 アイゼンハーケンの一撃を見て、敵は動揺しているだろう。

 もう一発撃ち込めば、『次は、自分に撃ち込まれるかもしれない』と恐慌を来すに違いない。


 ローエングリン侯爵も、その辺りの敵将兵の心理を読んで作戦を組み立てたに違いない。


 それに時間が経てば、敵がアイゼンハーケン対策を立てるかもしれない。


 俺はウルフ先輩に、『今、攻撃する理由』を説明した。


「――ウルフ先輩! アイゼンハーケンの一撃で、この内乱を終らせましょう! 俺とウルフ先輩で終らせるんです!」


「わかった! やろう! 戦艦ジャガーノートには、曳航用の巡航艦をつける」


「お願いします。では、準備を始めますので!」


「うむ!」


 映像通信が切れた。

 俺は決戦に武者震いした。

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