第23話 新たなミッション!

 メインスクリーンにダルメシアン大佐が映った。

 場所は戦艦の艦橋だ。

 ダルメシアン大佐の後ろには、艦長席に座るローエングリン侯爵が見える。


 ダルメシアン大佐が抑揚のない声で話し出した。


「こちらで莫大なエネルギーを放つビームと敵艦隊の消失を確認した」


「我が戦艦ジャガーノートがはなったアイゼンハーケンという超巨大ビーム砲の成果です!」


 俺は胸を張って報告する。

 ちょっと間があって、ダルメシアン大佐が抑揚のない声で質問した。


「私が受け取った戦艦ジャガーノートのデーターには、そのような武装は存在しないが?」


「後付けしました。ほら! ダルメシアン大佐からいただいた資金で!」


「あれか……」


 ダルメシアン大佐が眉根を寄せ目をつぶった。

 あら? 不味いことをしたかな?


「今後は武装の変更があったら速やかに申告するように」


「承知いたしました!」


 セーフ! セーフです!


「ローエングリン侯爵からお話がある」


 ダルメシアン大佐が、ローエングリン侯爵の後ろに立った。

 ローエングリン侯爵は、椅子に座ったまま話し始めた。


「デイビス・ジャガー男爵令息。見事だった!」


「ありがとうございます!」


 おお! ローエングリン侯爵が俺の武勲を認めてくれたよ!

 色々と葛藤があったし、状況的に危険でもあったが、やった甲斐があった!


 ありがとう! 超巨大ビーム砲アイゼンハーケン!

 ありがとう! クルップの親父さん!

 ありがとう! バター・ピーナッツ!

 君の笑顔を忘れない!(ウソ)


 俺はローエングリン侯爵に褒められて喜色を露わにした。

 艦橋にいる船員たちも、『やったぜ!』と喜んでいる。

 何と言っても総司令官直々の褒め言葉だからな。

 日々地味な仕事をこなす補給船団としては、飛び上がるほど嬉しい。


 ローエングリン侯爵は続ける。


「それで頼みがあるのだが?」


「何なりとお申し付けください!」


「今のを、もう一発撃ってくれ」


「は?」


 俺は素で返事をしてしまった。

 今のを……だとぅ!?


「今の攻撃……アイゼンハーケンであったか? 要塞砲にも匹敵する素晴らしい威力だ!」


「ごっつぁんデス……」


 俺は嫌~な感じに襲われているが、ローエングリン侯爵はご自身の作戦案を滔々と語る。


「敵の戦列で最も防御が固い一点にアイゼンハーケンを撃ち込み、敵の戦列に穴を開ける。さすれば、我が軍の精鋭が空いた穴からなだれ込み、敵の戦列は瞬時に崩壊するであろう! どうか?」


 どうかと言われても……。

 総司令官の作戦案だぞ!

 返事は一つしかないだろう!


 俺は顔を引きつらせながら返事をした。


「素晴らしい作戦案です! 乾坤一擲の役割を与えていただけましたことを感謝申し上げます!」


「うむ。頼むぞ。ウルフ提督の艦隊に合流してくれ! すぐ実行する!」


 映像通信は切れた。


「はぁ……」


 俺はどっと疲れて、大きく息を吐いた。

 同時に艦橋の船員たちが俺に詰め寄ってきた。


「ぼっちゃん! どうするんですか! エネルギーは、もう、ないんですよ!」


「まさかと思いますが……。この艦のエネルギーを放つつもりではないでしょうね!」


「今の状態でアイゼンハーケンを撃ったら、我々は宇宙を漂流するんですよ! 戦闘宙域ですよ!」


 非難ごうごうだ!

 だが、総司令官ローエングリン侯爵の作戦案に異議が唱えられるか?

 無理だ!


「ええい! うるさい! アイゼンハーケンを一発放つだけだ! ウルフ先輩に牽引してもらうから心配するな!」


「ぼっちゃん! 本当ですか!」


「嫌ですからね! エネルギー切れで真っ暗な中、宇宙を漂うのは!」


 船員はおさまらない。

 俺はサクッとスルーして命令を発した。


「戦艦ジャガーノート! 九十度回頭! ウルフ艦隊に合流だ!」

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