第13話 直撃!

「長距離ビーム! 直撃! 来ます!」


 艦橋のモニターに光源が映っている。

 AIが弾道計算し『直撃コース! 回避せよ!』と警告文を赤字で発している。


 アイアン提督の艦隊までは、少しだが距離がある。

 流れ弾ってヤツだ!


 クソッ!

 どこの下手くそが撃ったんだ!


 俺は瞬時に指示を飛ばす。


「針路そのまま! 避けるな! 後ろの輸送船に当たる! 全員何かにつかまれ!」


 回避は出来ない。

 戦艦ジャガーノートの影に隠れている輸送船に長距離ビームが当たってしまうからだ。

 ここは盾艦として、体を張るしかない!


「着弾! 来ます!」


 索敵要員が悲鳴混じりの報告を上げ、艦橋のモニターが長距離ビームの光をまぶしく放つ。


 同時に戦艦ジャガーノートに衝撃が走る。


「「「「「うわー!」」」」」


 艦橋に悲鳴が溢れる。

 長距離ビーム砲の直撃を受け、戦艦ジャガーノートは横へスライドする。

 同時に姿勢制御AIがスラスターを操作し、艦を復原しようと逆方向へスラスターを噴出する。


 ギシギシと金属をこすり合わせる音が響き、横揺れに襲われる。

 体が右へ左へと激しく揺さぶられ、一瞬軽い脳震盪を起こす。

 俺は艦長席にしがみついていたが、目だけは閉じないようにしていた。


 艦橋では、男たちが泣きそうな顔をして手近な物にしがみついていた。

 運悪く歩いていた船員が吹き飛ばされ、艦橋の壁に頭を打って失神した。


 すぐに揺れはおさまった。

 俺は失神した船員にかけよった。

 頭から血を流している。


 艦橋を見ると、みんな茫然自失だ。


 俺は空気を胸一杯に吸い込み、腹に力を入れて大声を出した。


「艦橋で一人負傷! 医務室へ運べ! ダメージコントロール! 始めろ!」


 艦橋の全員がハッとして動き出した。


 幸い戦艦ジャガーノートにダメージはなかった。

 エネルギーシールドが、長距離ビームを防いでくれた。

 距離があったので、威力が減衰していたのもあるだろう。


 各所から無事、問題なしと報告を受けて、艦橋がホッとした空気に包まれた。


 ベテランの副長が俺のそばに来た。


「ぼっちゃん、重要な報告が一つ」


「何だ?」


「ザワークラウトは無事です」


 ベテランの副長は、ニヤリと笑った。

 俺は副長の報告にクッ! と軽く笑う。


「そいつは……安心した! ザワークラウトの神様が守ってくれたんだろう……」


 俺は生きていることを心底神様に感謝した。

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