第12話 決戦! アストラリウム星系!

 コンドール要塞から一光年離れたアストラリウム星系。

 アストラリウム星系は、障害物のないだだっ広い宙域で、大軍が戦うのにうってつけの宙域だ。


 宰相・ローエングリン侯爵派は、ローエングリン侯爵を総司令官として、九名の上級指揮官が参加、総兵力は一千五百万人、総艦艇数十万隻を揃えた。


 一方、敵である名門貴族派の戦力は、参加貴族約三千名、総兵力二千万人、総艦艇数十五万隻以上と推定されている。


 ただし、名門貴族派の艦艇はバラバラで、貴族のクルーザーに武装を載せただけといった急ごしらえ軍艦も含まれている。


 だが、考えて欲しい。

 敵、味方合わせて三千万人以上が一つの宙域に集中しているのだ。


 消費される物資の量は莫大だ!

 一日だけで食料が四千万食以上消費され、弾薬、ミサイル、エネルギーが消える。

 補給をする身としては勘弁して欲しい。


 戦端が開かれてから、俺たちジャガー男爵領補給船団は大忙しだ!


 現在の任務は、猛虎と恐れられているオレンジ髪のティーゲル提督の艦隊に食料を輸送しているところだ。


 戦艦ジャガーノートの艦橋で指揮をとっていると、ティーゲル提督から映像通信が入った。

 正面モニター一杯にティーゲル提督の恐ろしい顔が映し出される。


『ジャガー! 朝メシはまだか!』


『今、急行しています! 駆逐艦を中心とした百隻ほどの集団が突出して、私の輸送船団を狙っています! 追い払って下さい!』


『おのれ! 俺たちの朝メシを横取りするつもりか! ソーセージはわたさんぞ!』


 通信はブツリと切れた。

 俺たちジャガー男爵領補給船団を襲おうとした敵の集団は、ティーゲル提督に爆散させられてしまったのはいうまでもない。

 オーバーキルとは、このことである。


 ティーゲル提督に食料を届け、後方の物資集積宙域に戻ると、すぐに物資を満載して前線だ。


 仕組みとしては、こうだ。


 まず戦場から二光年離れた惑星の帝国軍基地に物資が集積されている。

 この基地からアストラリウム星系まで、最新型の高速輸送船がピストン輸送を行っている。


 俺たちは高速輸送船が運んできた物資を、前線に届けるのが任務だ。

 俺たちの周りには、旧型の大型輸送船が多い。


 新型の足の速い輸送船は、後方でピストン輸送。

 足の遅い旧型輸送船は、前線近くの輸送任務と役割分担がされている。


 積み荷の上げ下ろしを担当する船員から報告が入った。


「ぼっちゃん! 物資の搬入完了! ゲート閉じます!」


「よーし! 発進だ! 戦艦ジャガーノートは前へ出ろ! 索敵要員は敵を見逃すなよ!」


 物資集積宙域から前線へ向かう。

 俺が乗る戦艦ジャガーノートは、旧型ではあるが大型の戦艦だ。

 装甲が厚い。

 輸送船の盾になるにはピッタリの艦だ。


 戦艦ジャガーノートの後ろには、クルップ工廠で調達した超オンボロの輸送船が牽引されている。

 この輸送船は、超巨大ビーム砲アイゼンハーケン用のエネルギー供給船なのだが、甲板に物資をワイヤー固定している。

 積み荷はザワークラウトである。

 万一弾が当たると、ザワークラウトを楽しみにしている兵士が泣く。


「ザワークラウトに当たるなよ……」


 俺は祈りの言葉を口にしながら、補給を待つ艦隊へと向かった。


 補給先は、アイアン提督の艦隊だ。

 アイアン提督の艦隊に近づくと戦闘の真っ最中で、五千隻の敵集団と長距離ビームで打ち合っている。


 俺たちは戦闘の邪魔にならないように、後方からそっと接近する。

 俺は船団に指示を出す。


「ジャガーノートは、船体を横へ向けろ! エネルギーシールドは全開にしておけ! 輸送船は、ジャガーノートの影に入れ!」


 大型戦艦ジャガーノートが、盾になり輸送船を守る陣形。

 前線への補給任務では定番となり、もう何度もやっている。


 突然、艦橋の索敵要員が金切り声を上げた。


「長距離ビーム! 直撃! 来ます!」

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