第10話 皇帝崩御
帝都に戻ると、新聞、テレビ、インターネットは『皇帝崩御』のニュースで埋め尽くされていた。
俺はローエングリン侯爵の元帥府で、ダルメシアン大佐の部下であるフェルマー少佐から帝都で起ったことを聞いた。
フェルマー少佐は、白い髪、黒いの瞳をした三十代の青年将校だ。
皇帝が崩御したのは、三日前だった。
だが、皇帝崩御の事実は伏せられた。
宰相の手配だ。
宰相は内密にローエングリン侯爵へ皇帝崩御を知らせた。
ローエングリン侯爵は、すぐに行動を開始。
宰相・ローエングリン侯爵派閥と敵対する名門貴族派に所属する貴族たちの逮捕に踏み切った。
やられる前にヤレというわけだ。
だが、名門貴族派も宮廷にスパイを入れていて、皇帝崩御は漏れていた。
帝都を脱出しようとする名門貴族派の宇宙船と、脱出を阻止せんとするローエングリン侯爵旗下の宇宙艦隊で帝都の空が埋め尽くされたそうだ。
とはいえ、帝都の空で戦闘するわけにもいかず、ローエングリン侯爵旗下の宇宙艦隊は進路妨害、強制接舷で対応した。
帝都への被害を考慮して、発砲を控えたのだ。
名門貴族派の宇宙船は、これ幸いと追跡を振り切り逃走した。
結局、ローエングリン侯爵は、名門貴族派の三分の一を逮捕、拘禁した。
今朝になり、皇帝が崩御したと帝国中に知らされ、宰相とローエングリン侯爵の連名で、王子が次の皇帝であると発表された。
「――という状況でした」
「なるほど……。情報をありがとうございます。いずれにしろ大義は我らにあると?」
「ええ。新たな皇帝陛下は、我々の手中にあります」
名門貴族派の三分の一を逮捕拘禁した――逆に言うと三分の二は、自由の身だ。
我が大銀河帝国は、皇帝と貴族によって統治されている。
名門貴族派の三分の二……。
かなり力がある。
名門貴族派の連中は様々な既得権を持っているので、油断は出来ない。
ローエングリン侯爵が、皇帝を手中に収めたこと――つまり大義名分を得たことは、ワンポイントもツーポイントもリードだ。
俺はテーブルに出されたコーヒーを一口飲む。
「それで私の仕事は?」
「こちらを、ダルメシアン大佐からの指示書です」
フェルマー少佐が、ファイルを差し出す。
輸送計画書だ。
「かなり綿密な計画書ですね」
「ダルメシアン大佐が作成されました。ダルメシアン大佐が補給など後方作業を指揮します。ジャガー少佐は、ダルメシアン大佐の指揮下でジャガー男爵領輸送船団の運用をお願いします」
「承りました。では、早速出発します!」
「航路の無事を祈念いたします!」
俺とフェルマー少佐は、敬礼を交す。
俺が率いるジャガー男爵領輸送船団は、帝都を出発した。
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