第8話 超巨大ビーム砲アイゼンハーケン!

 俺は宇宙戦艦ジャガーノートの艦橋から、地上に横たわる強大なビーム砲を見た。

 クルップの親父さんが、胸を反らして俺に告げる。


「あのドデカイビーム砲が、アイゼンハーケンだ!」


「アイゼンハーケン!?」


「ああ。帝国軍の兵器工廠にアイゼンって野郎がいたんだ。もう、百パー趣味で兵器開発をやってるヤツでよ。そのアイゼンが開発した一点物の戦艦搭載用超巨大ビーム砲! アイゼンハーケンよ!」


「へえ! 帝国の兵器工廠製か! よく手に入ったな!」


「まあ、そこは色々よ……。アイゼンハーケンはな! 要塞主砲と同等の破壊力がある! 駆逐艦や巡航艦の装甲なんてボール紙よ。一撃で百隻以上が蒸発する。戦艦のぶ厚い装甲やエネルギーシールドでも、アイゼンハーケンは防げねえ! 直撃した瞬間、お陀仏って寸法よ!」


「ほう! 凄い艦砲だな!」


「だろう! 掘り出し物だぜ!」


 駆逐艦や巡航艦はもちろん戦艦でも相手にならない。

 アイゼンハーケンは、凄いビーム砲だ!


 だが、色々と疑問がある。


「だけど、あのアイゼンハーケンは、本当に戦艦に搭載できるのか? やたら大きいが……」


「全長八百メートルの代物だからな。新型戦艦には無理だろう。だが! ドレッドノート型なら、外付けでイケる!」


「外付けなんだ……」


 つまり俺が乗る戦艦ジャガーノートの甲板に据え付けるのか……。

 見た目が凄いことになりそうだ。


 それでも威力があるなら――いや、待て! 待て!


 無重力空間であんな巨大な砲をぶっ放したら、戦艦ジャガーノートが後ろに吹っ飛ぶのでは?

 慣性の法則で知らない銀河系まで飛んでいってしまいそうだ。


 クルップの親父さんに俺は疑問をぶつけた。


「ビーム砲だから大丈夫だ!」


「本当に大丈夫なのか!? ビーム砲といっても、あのサイズだぞ!」


 俺は戦艦ジャガーノートの艦橋から地上を指さす。

 超巨大ビーム砲アイゼンハーケンは、地上に置いてあるにも関わらず、異様に存在を誇示しているのだ。


「まあ、実体弾だったら、反動で艦が消し飛ぶがビーム砲だから大丈夫だろう」


 何か不穏な言葉とテキトーな言葉が聞こえたぞ!

 俺はクルップに詰め寄る。


「クルップ! アイゼンハーケンを発射した瞬間に、撃った俺たちが吹き飛ぶのはゴメンだぞ!」


「だから! ビーム砲だから大丈夫だって! ビーム砲は粒子だから物理的な反動はねえんだよ!」


「じゃあ、アイゼンハーケンを撃つリスクはないんだな?」


「……」


「なぜ黙る!?」


「……」


「なぜ目をそらす!?」


 ちょっと待ってくれ!

 クルップの親父さんは、何か隠しているな!


 超巨大ビーム砲アイゼンハーケンには、欠点があるのだろう。

 そうでなければ、帝国軍の兵器工廠で開発された装備が、こんなジャンク屋もどきの私設工廠に流れてくるわけがない。


 いつの間にか、ブリッジにいる船員もクルップの親父を取り囲んでいた。

 船員たちも気になるのだ。


「ビームを撃った瞬間、俺たちも昇天なんて真っ平ですよ!」

「俺には家族がいるんだ!」

「クルップさん! 本当のことを言って下さい!」


 数の圧力にクルップはタジタジだ。


「ま、待てよ! 反動は本当に大丈夫だって! 帝国軍兵器工廠の実験データーに目を通したが、反動はなかった!」


 ふむ。帝国軍兵器工廠が実験したデーターなら信頼して良いだろう。

 じゃあ、何が問題なのだろう?


「ビームを撃った瞬間砲身が焼けただれるとか?」


「いや、砲身は超高精度の耐熱素材でコーティングされている。大気圏に突入しても焼け落ちることはない! 熱対策は大丈夫だ!」


 ふーん……熱対策『は』か……。

 じゃあ、熱以外に何かあるんだ……。


「で? 何が問題なんだ?」


「……」


「クルップ!」


 艦橋にいる全員がクルップを取り囲み、圧をかけ続けたことで、クルップは問題点を白状した。


「アイゼンハーケンを撃つと艦が動けなくなる」


「「「「「は?」」」」」


 艦橋の全員がポカンとしてしまった。

 ビーム砲を撃つと、艦が動けなくなる?

 どういうことだろうか?


 俺は詳細な説明をクルップに求めた。


「だーかーらぁ! アイゼンハーケンは超巨大ビーム砲だろう? 要塞主砲と同程度の威力があるだろう?」


「……」


 俺たちは黙ってクルップの説明を聞いた。

 クルップは拳を握り言葉に力を込める。


「つまり! 必要とするエネルギーも、物凄い量だ! 全艦のエネルギーをアイゼンハーケンに込めて発射するのさ……。敵と刺し違える覚悟で放つ! それが! アイゼンハーケン!」


「「「「「俺たちを殺す気かー!」」」」」


 俺たちはクルップをボコボコにした。


 ◆―― 作者より ――◆

 クルップのセリフ『お陀仏って寸法よ!』のお陀仏は、『設定上おかしいかな?』と思ったのですが、キャラクターの性格的に言わせたかったので、そのまま『お陀仏』にしました。

 違和感を覚えたら、ごめんなさい。

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