第21話 デート
「カイン様。気持ちいいですね」
「あぁ。そうだね」
俺たちが何をしているかというと、海にデートに来ていた。
晴れて結ばれた俺たちだが、お互い職責があり多忙な身。せっかく海の近くに来ているのだデートでもしようと、帝城への帰還を1日遅らせて有名なビーチを訪れていた。
護衛も遠巻きに見守るだけであり、俺も変に皇帝っぽく振る舞う必要もなく素で居られる。
こんなことなら水着でも…いや、そもそも水着がないか。素材とかに詳しいライナに頼めば似たような素材ないかな?
そんなことを考えながら、海辺ではしゃぐノエルを眺める。
一時の平穏を楽しむ。
海辺で遊んだ後、近くの町の小奇麗な食堂で夕飯を楽しんだ。
中々おいしいな。
舌鼓を打っていると、5人の隣の卓の客が絡んできた。
「お嬢さん。うちのヘイル・レプラス男爵様と一緒に食事でもどうですか?」
ちらっと確認するとちょっと高価な服に身を包んだ青年がいた。
へイル男爵は自信満々な顔をする。
「由緒正しい貴族である俺と食事できるのだ。断る理由はないだろう?」
「いえ、結構です」
お忍びでということもあり、俺たちは一般人に混じれる服装をしている。まさか、こんないかにもなやつに絡まれるとは…。
改めてヘイル男爵の顔を確認すると真っ赤になっていた。
「ちょっと美しいからって優しくしたらつけあがりやがって!」
へイル男爵は周囲の男どもに顎をやる。
男どもはぞろぞろと立ち上がる。まぁそっちがその気ならしょうがない。おとなしく帰るなら見逃そうと思ったんだがな。
俺は手を挙げて合図を上げると、周囲の客に扮していた近衛騎士たちが瞬く間に男たちを制圧した。
「おい!なんだおまえら!俺は公国の由緒正しきレプラス男爵家当主だぞ!こんなことをしてただで済むと思っているのか!?」
「この方を誰と心得る!アルカニス帝国皇帝カイン・レヴァン・アルカニス様であるぞ!」
そこで初めてレプラス男爵は真っ青になりながら俺の顔を見る。あれ?もしかしてノエルに見惚れて俺に気づいてなかったのか?
「だ、だからなんだというのだ!ここは公国だ!」
そこで俺は初めて口を開く。
「ほう。ご存知ないかな?シルビア家は帝国の伯爵になり、ここは帝国に編入されるのだがな」
「そ、そんな話聞いたことがない!でまかせだ!さては皇帝というのも嘘だな!」
すごいな。そこまで言われたら何言っても無駄な気がしてくる。
それにしてもこいつの顔を晩餐会でも見なかったが…さては、亡国の危機に逃げだしたか。そして勝ったから意気揚々と戻ってきた…ってところか。
まぁそんなこと調べればわかることだ。
「連れていけ」
「おい!?離せ!やめろ!」
俺が指示すると近衛騎士達はどこかへ連れ去っていく。
良い雰囲気だったが、台無しだな。とりあえずデートもここまでかな。
俺とノエルと近衛騎士は城へと戻る。
夜になり、ベッドで横になろうとする。
コンコン。
ドアがノックされ、開けるとノエルが立っていた。
「カイン様。中に入ってもよろしいでしょうか?」
「あぁもちろんだ」
ベッドの淵で二人で座る。
ノエルは風呂上りで輝いており、ネグリジェで色気を感じる。
なんて声をかけたらいいのやら…恋愛経験雑魚には些かハードだ。
先に口を開いたのはノエルだった。
「カイン様にお願いがあるのです。もしよければ愛の形をいただけませんか?」
愛?愛の形?
あっ!そうか妻になってくれと言ったが指輪を送っていなかった。それのことか!
危うく勘違いするところだった。
「あぁもちろんだとも」
「良かった。優しくしてくださいね?」
ノエルはすっと近づくと唇が重なる。
夜はまだ続きそうだ。
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