第20話 新たな道
会議室には俺とノエルとジェイソン公王とカミーラ公女の4人が集まった。
「まず、すでに決まったことだが、シルビア家を帝国の伯爵に任ずる。魔物で壊滅した2都市はカリウス・バルトに与える。常時1個軍団が駐屯するようにするが、異論はないな?」
「もちろんです。陛下、私どもとしましても2都市の復興に回せる余力はなく帝国軍が駐屯していただけるのはありがたいことです」
「なにかあれば帝国軍に連絡を入れるといい。帝国の一部になったシルビア家を守るのは帝国軍の使命だからな」
「その時はぜひ。それと陛下にお願いがあるのですか…」
「なにかな?」
ジェイソンはカミーラ公女に目をやり、カミーラ公女は資料を配る。
渡された膨大な資料には名前や基本的な情報などが羅列されていた。
「実は今回の件で、多くの孤児がうまれており身寄りもないため頼るあてもなく、我が家としても彼らを食わせていく余力はないのです…」
2都市やその周辺の村でもゴブリンに襲われ子供を守るために犠牲になった親は多い。大人なら仕事さえ与えれば生きていけるが、子供だとそうはいかない。下手に放置すればストレートチルドレンとなりやがてスラム街を形成し治安の悪化を招く可能性が高い。別に帝国がシルビア家に金を出して支援してもいいが、結局避難民であふれている現状、需要と供給が釣り合っておらず孤児たちが就職できる目途が立たないのだ。それなら帝国で…というのも納得の話だ。
まぁノエルが隣で耳打ちして解説してくれたわけだが。
「なるほど。ならばこちらで引き取ろう」
「ありがとうございます陛下」
「構わないさ。これからもよろしく頼むシルビア伯爵」
「もちろんです陛下。帝国に忠誠を誓います」
叙任式はまた改めて帝城で行うことになるが、これでひと段落ついた。
俺は会議の後ノエルを散歩に連れ出す。
二人でとお願いしたので、庭園で護衛を連れず二人で歩く。
なんと切り出したらいいものか…
ノエルも何も言わずに、付き従ってくれている。
くそ!恋愛経験のほとんどない俺にいきなり求婚はハードルが高すぎる!
だが、やるしかない皇帝補正を頼りに平静を装うんだ!
「思えば、随分と遠いところまで来たように思える」
「えぇ。そうですね。ここまで来れたのも陛下の才覚あってのものかと」
「いや、みなが支えてくれたからこそ帝国と今の私がある。ノエル。君のおかげだ」
「そんな、もったいなきお言葉です」
ここだ!ここで決めるしかない!
庭園を歩きながら言葉を続ける。
「そして私は皆のためにも、まだここで歩みを止めるつもりはない。大変な道のりになるかもしれん。だが、これからも私を支えてくれないか?七星としてだけではなく…妻として」
俺は意を決してノエルのほうを向く。
ノエルは頬に一粒の涙が伝う。
え?泣くほど嫌だった?そんなまさか、勝率100%だと思っていたのに!?
「嫌だったら、断ってくれてもいい…」
さすがに嫌がる相手に結婚してくれと言う気はない。皇帝という立場があるし逃げ道を作る…。
ノエルは頭を横に振る
「いえ、そんなことはないです。私でよいのですか?」
「ノエルが良いんだ。君を喪うかもと思ったとき、怖かった。これからも私のそばに居てほしいんだ」
これは俺の本心だ。彼女を失いたくない。
彼女は目もとを拭い、いつもの笑顔を見せる。
「よろこんで。いつまでも陛下のおそばに」
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