第16話 開戦

それから準備をしていたが、あっという間に戦いの日は訪れた。

作戦会議には多くの指揮官を集め、バルト元帥が説明を行う。


「今回の作戦は短期決戦を目標とする。籠城していた場合、主導権は取れずゴブリンが周囲の町を襲うのは避けたいからだ。これより具体的な作戦内容を説明する」


公国の命運がかかったこの一戦に皆が真剣な面持ちで傾聴する。


「第一段階として、騎兵部隊による敵戦力の誘因。第二段階は公国・帝国連合軍による遅滞戦闘。この時、あえて中央突破を許す形とするが二手に分かれた両翼はなんとしても敵を後退したラインで食い止めよ。第三段階は中央突破した敵は城壁で受け止め三方向による半包囲を行う。敵戦力全体を包囲下に置くため、状況によって両翼は後退し、スペースの確保に努めよ。今のところ質問は?」


バルト元帥が周囲を見渡すと、一人の若い軍人が手を挙げた。


「第三段階の際に、敵を押しとどめることが難しい場合はどのように?」

「その際は予備隊を投入するし、シリス殿の魔法で支援を行う。それで耐えてもらうほかない。ほかに質問は?」


周囲の反応を伺うが特に質問もないようでバルト元帥は説明を続ける。


「第四段階はレイナース卿、近衛騎士団によるゴブリンキングへの強襲を行う。すでに偵察がゴブリンキングの位置を把握しており、敵主力を正面にひきつけ、手薄になったところを叩く。その後、第五段階へと移行し予備隊はすべて投入。近衛騎士団が敵の後背を抑え、四方向による完全包囲を行う。第六段階にてシリス殿による包囲下での殲滅魔法と、残った敵の残敵掃討を行う。作戦は以上だ」


結構筋肉モリモリなバルト元帥だが、彼は結構な頭脳派なのだ。

帝国での個人の武力最強がレイナースとすると、バルト元帥は帝国での軍での最強と言える。どちらも得難い存在であることは間違いない。

質問がないあたりで、バルト元帥は作戦会議の終了を宣言する。


「作戦説明は以上だ。もう間もなく、開戦となる。各々がたは最後の武器の手入れなど準備をお願いする」


それぞれの軍人が己の持ち場へと戻っていく。

俺とノエルとバルト元帥とシリスは階段を上り、持ち場となる城壁の上に並び立つ。

おいシリス眠そうに欠伸するな。さっきの作戦会議寝てただろ。

城壁の下には多くの兵が準備も行っていた。


「陛下。ぜひ彼らにもお声がけを」

「わかった」


俺は息を吸い込み、声を吐く。


「公国・帝国連合軍の諸君よ。もう間もなく、ゴブリン共の波がここに押し寄せるだろう。だが、案ずることはない。ここには百戦錬磨のバルト元帥がいる!諸君に帝国の加護があらんことを!」

「「「うぉぉおおおおお!」」」


士気は高く、作戦はこれ以上ないと言っていい。あとは賽の目を信じるのみ。


さぁ開戦だ。



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