第17話 ゴブリン戦争

地平線の向こうから騎馬の群れが確認できる。そして、その後ろに緑の一団が見える。その緑の一団はどんどん地平線を塗り替える。

騎馬隊はこちらの陣に到着し、ゴブリンもそれを追いかける。


ほどなくして前線とゴブリンの一団は衝突した。

前線は優利に見えるが、それはあくまで最前線をひた走った疲弊したゴブリンを相手にしており、待てば待つほど後続のゴブリンが到着し、数の差で潰そうとする。

もちろん。それを許すはずもなく、バルト元帥は指揮を執り、敵に包囲されないよう後退を始める。ただ後退するのではなく、ゴブリンに反撃を加え、怯ませたところで距離を作り、後退を繰り返す。


本来敵を引き付けての後退は難しいのだが、バルト元帥の指揮のもと何とか成り立っている。城壁へとすぐそこまで迫り、やつらも勢いが増している。

バルト元帥は合図を送り、中央を大きく後退させ突破を許す形になる。これ幸いとゴブリンが殺到し、押していた力が受け流されるように城壁の下へと向かう。


「攻撃を開始せよ」


俺の合図とともに、ノエルは魔法で、ほかの市民は投石やら弓やらで城壁の下のゴブリンを叩く。

両翼の軍は緩やかに後退し、疲弊した部隊のために予備隊が投入され戦列を維持する。

バルト元帥が合図の旗を掲げる。


丘の頂上にゴブリンの一団がおり、そこ目掛けてレイナース率いる近衛騎士団が突撃した。ゴブリンの一団は難なく蹴散らされ、あとは仕上げだと思っていると。

城壁の下のゴブリンに体格がデカいやつがいた。ゴブリンキングだ。

奴は弓を構える。だが狙っているのは俺じゃない。やばい!


俺はやつの視線の先に気づき、自身にありたっけの白魔法でバフをつけ、駆け出す。

俺の手がノエルを僅かに押した後、強い衝撃が腕を襲った。


「うぐっ…」


俺はうずくまりながら、痛みに叫びたくなる衝動を必死に抑え込める。

耐えろ俺。こんなもの城壁の下で戦っている彼らに比べたら大したことない。ここで俺が負傷したと周知されれば、士気が下がるかもしれん。

そういやノエルは無事だろうかと確認すると俺の横で今にも泣きそうな顔をしていた。


「へ、陛下…私なんかのために」

「ノエルが無事でよかった」


無事なほうの手で彼女の抱き寄せ、頭をなでて落ち着かせる。

あぁ。本当にノエルが無事でよかった…


城壁の向こうで閃光と爆発が起こる。

俺は気を失った。




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