第4話

 キンジは俺をみながらニヤリと微笑んだ。


 先ほど俺を刺したということに対して悪びれた様子がない。


 まじかこいつ。


「お前、今俺にしたことわかってんのか?」

「えっ? おう、わかってるに決まってるだろ。刺した、お前のほっぺたをな」

「俺じゃなかったら、どーなってたと思ってやがる。つーか、俺であってもやっていいことじゃねえだろ!!」


 再生するというのを確かめるために俺の頬に向かってカッターを突き刺す。

 尋常な人間ならそんなことしない。

 イカれている。


 金谷キンジという男はいかれている。


「うるせーな、お前だからやった。確かにいいことじゃねえけど、この目で確かめてえんだよ、真実はな」


 だからといって初対面でやっていいことではないはずだ。


「まっ、悪かったな。ははは、なんも怪我してねーし結果オーライだな!」


 へらへらとそう言う感じを殴りたくなってしまった。

 つーか殴る!


 俺は拳をキンジに向かってすぐさま振った。


 拳はキンジにぶつかった。


「なっ、何しやがるんだお前!?」


 涙を流しながら、頬を抑えるキンジ。


「やり返しだ。本当は俺もお前の顔面にカッター刺したいけどな」

「やめろ!!」

「お前はそんなことを俺にしたんだよ」

「なんかごめんな!」


 なんかって……。

 道徳の授業をもう一度受け直して欲しいなあ。

 こんな人間が社会に出ると考えると恐ろしい。


「お前、冒険者向いてねーよ。つーか、社会に出るな絶対にな!」

「ひどっ!! まあっ、こんなくだらねえ話するために俺はお前に話しかけたんじゃねえ。なあ、アサヒ?」

「んだよ」


 ただ昨日のことを確認したくて俺に話しかけたようではなさそうだ。

 なら?


「俺とパーティー組まねえか?」

「は?」


 キンジは壁に寄りかかり。


「二年からよパーティー組んで本格的に冒険者としての勉強が始まるだろ?」


 キンジの言う通り、二年からはパーティーを組み、冒険者実習が始まっていく。

 パーティーは各自で作るのだ。

 作らなければ余物通しでパーティーを結成することとなる。


「俺、カルマと組む予定だったんだけどよ」


 カルマ。

 その名前だけで俺は誰なのか一瞬にして理解した。

 紅林カルマ。

 学年トップの実力者。

 父はあのトップ冒険者パーティーのリーダーである紅林カイト。

 この学校で知らないものなどいるはずがないに決まっている。


 そんなやつとこいつはパーティーを組む予定だと?


「それマジで言ってんのか?」

「ああ、あれ、知らねーのか? 俺って学年で上の方だぜ実力よ」

「初知りだ。なら、カルマと組めよ。俺なんかと組む必要ねーだろ」


 将来的もカルマのパーティーに入れるのなら入ったほうがいいに決まっている。

 

「それじゃダメだろ。俺はな、面白えことが好きなんだよ。お前には可能性を感じる、カルマを超えられるな!」

「俺にそんな可能性あるかあ?」

「自信持てって」

「お、おう」


 俺にそんな可能性がある気がしない。

 流石に不死身だからと勝てる相手ではない。

 カルマはそれほどまでも上の存在だ。


「俺さ、カルマが嫌いなんだよ。あいつ、めちゃくちゃスカした顔すんだろ? 人を見下してるの見るとムカつくんだ。あいつとは一回戦ったことがある、正直言うとよ、俺には一生かけても勝てる相手ではなかった。あいつの【完全自動な聖剣オートバスター】っつースキルのせいで近づくことすらできなかった。けど、お前なら自動回復する力がある、つまり近づくことができる!」


 スキル【完全自動な聖剣オートバスター】。

 カルマの半径一メートルに入る"命あるもの"に対して自動的に宙に浮かぶ透明な聖剣が攻撃してくるスキルだ。


「な? 俺とパーティー組んで、カルマを倒そうぜ!」


 そう言って、キンジは俺に手を差し伸べた。

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【悲報】スキル『自動回復』が覚醒した結果、不死身になったんだが?〜アンデッドマンってそれ俺なんですけど!?〜 さい @Sai31

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