第3話
「はあはあ……」
す、すげえ!!
なんだ、どうなってんだ!?
確かに少しずつ身体の傷がつかなくなっていた。
これが覚醒……。
倒れ込む不良たちの中、一人の不良が俺に向かって殴りかかる。
「【
顔面に直撃し、ボワっと顔が燃え上がった。
「ああああ──ッ!!!!」
熱い。
顔が溶けていく。
痛い痛い痛い痛い。
こいつ、やべえ。
なんてことしやがる……。
俺じゃなかったら死んでるぞ……。
「ふん、こっこれなら、どっ、どーだ!! 【
炎が消えた。
目の前がぼやけている。
というか、死ぬほど痛い。
熱い。
「ははは、すげえ顔だな!!」
だが、すぐに痛みが引いていく。
シュウウウ、という音が聞こえる。
視界が復活していく。
「なっ!?」
再生していく俺を見て不良は口をぽかんと開け呆然とする。
す、すげえ!!
これが俺のスキルなのか!?
「あっ、アンデッドだ」
「失礼なこと言うな。俺は……」
不良に向かって全力で拳を振るった。
「榛原アサヒだこのヤロー!!」
拳は不良の顔面に激突。
思いっきり振り下ろす。
ゴキゴキ、と不良の鼻が折れる音がした。
白目を剥き、不良はその場に倒れた。
「お前にはそのツラがお似合いなんだよ」
空を見る。
「あれ、雨?」
目を拭いた。
やった、ついにやったぞ。
まさか、本当にスキルが覚醒してしまうだなんて。
とんでもない再生能力を手に入れてしまった。
「はははッ、もう俺は弱くねえ!! ツエー!!」
○
次の日、学校へとやってくると昨日のことが完全に噂となっていた。
すれ違う生徒たちが皆、俺のことを見る。
あー、有名人になったって感じがするなあ。
本当、最高だ。
昨夜、どれほどの再生能力があるのか確認するため、自分の指をハサミで切ってみた。
激痛が全身を襲ったが、すぐに激痛はなくなり、指が自分の手に戻ってきた。
ただだ。
どうやら血は戻ってきていないところから減っているようだ。
つまり、このスキルは使い方次第で血がなくなってしまい死ぬ可能性がある、ということになる。
流石に弱点はあるみたいだ。
まっ、それ以外では死なねーし。
俺は今、死から一番遠い人間になったのかもしれない。
周りがいまだに俺を見ている。
いじめられっ子がいじめっ子に勝ったんだ。
当たり前か。
一年C組の教室に入るや否や、周りが俺に注目し、ざわざわと話し出した。
自分の席に着いて、あくびをする。
ちょっ、流石に見られすぎだろ……。
なんかはずっ。
こそこそ話すなよまじ。
と、その時だった。
「お前すごいな、楠本たちをやったらしいじゃん」
なんて一人の男の声がする。
「ん?」
見ると、金髪でロン毛の男が立っていた。
あー、見たことあるな。
同じクラスの……名前がわかんねえや。
「まっ、まあな」
楠本とは俺をいじめてたグループのリーダーである。
「すげえな、あの弱キャラ榛原が倒しちまうなんて!!」
ひっ、ひど。
確かにその通りですけど……。
「お、おう」
「聞いた話だと、何度傷を負っても治る……アンデッドみたいだったらしいじゃねーかよ」
「お、おう」
男はニヤリ、と白い歯を見せて。
「どんな感じなのか見せてもらうぜ!!」
ポケットからカッターを取り出し、俺の顔面目掛けてカッターを刺した。
「うッ!!」
カッターを抜き、男は言う。
「再生とやらを見せてもらうぜー」
俺は刺された場所を押さえた。
なっ、なんてやつだよこいつ。
シュウウウ、と音を立てながら傷がなくなっていく。
「すげえ、本当にアンデッドじゃねーかよ。あっ、俺は金谷キンジ。よろしくな、アサヒ」
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