第2話

『スキルを覚醒することで、よりスキルの力を発動させることができる!!』


 なんてこと言ってるけど、本当か?


 そもそも覚醒って……。


 ネットで『スキル 覚醒』と調べてみても関連はゼロ。


 嘘じゃないよな……?

 信ぴょう性が無さすぎるんだが。


 まっ嘘に決まってる。


 俺はスマホをポイっとベッドに投げ、ベッドに倒れ込んだ。


 嘘に決まってる。

 何を変な期待してるんだ、馬鹿馬鹿しい。

 

「……」


 いや、嘘でもいい。

 何もしないままいても俺は冒険者になんてなれるような人間じゃない。


「馬鹿馬鹿しいけど、やるだけやるべきだよな。もしかしたら、本当にスキルが覚醒するかもしれねーし……」


 信憑性は皆無。

 ただ、やるだけやる方がいいに決まってる。

 もしかしたら、本当にスキルが覚醒するのかもしれないのだから。


「俺のスキルが覚醒したらどーなんだ? 死なねー身体でも手に入るのか?」


 なんて冗談を口にしていた俺だが、後にわかることとなる。

 俺の冗談が本当になることを。



 スキルは限界まで使うことで鍛えられるらしいが、俺の場合、限界までどうすれば使えるのだろう。


 一回死んでみるか?

 いや、さすがにそれはやりすぎだよな。


 俺は腕を組んで考える。


 ふん、一つしかねえな!!


 俺が辿り着いた答えは一つだけ。


「俺をボコれ!! いつも以上にな!!」


 不良に殴られること!!

 

 当然、不良たちは俺をみて引く。


「おい、こいつ……頭おかしくなったか?」

「ボコしすぎた感じじゃねーかこれ!!」


 なんてことを言っているが、これは俺に必要な儀式!!


「早くボコしてくれ!!」

「お、おう!!」


 限界まで【自動回復オートプレーバック】を使うことできっと俺は強くなれる。

 そう信じて、不良たちにひたすらボコされまくった。


 カアカア、とカラスが飛んでいく。


 気づけば、空はオレンジ色になっていた。


「ほ、本当にこんなのでスキル覚醒すんのか!?」


 いつも通り、身体の傷が全然治っていない。

 保健室で治してもらわなくては。


「いてて……ガチでいつも以上にボコしやがって……」


 身体中に青ずみができてしまった。


「全然ダメじゃねえか……いや、いきなり覚醒することなんてないよな。少しずつ強くなる感じだよな……」


 実力とは継続。

 どれだけボコボコにされるのに耐えられるかだ。


「うおおお!! やってやるよ、もっとボコされて強くなってやるよ!! んで覚醒させてやるよ!!」


 こうして俺のボコボコにされる毎日が始まった。


「今日もやってくれ!!」


 週に一度ほどのいじめは毎日になった。

 毎日にさせた。


 当然、不良たちは俺を変な目で見ているが関係ない。


 強くなるため、強くなるため……。


 何度も何度も自分にそう言い聞かす。


 強くなって冒険者になるんだ。

 そのためならなんだってしてやるよ。


 日に日に明らかに傷が少なくなっているのがわかる。


 三週間後が経過し、目でもそれがわかるようになった。

 なんと、青ずみができなくなっていたのだ。


「おい、こいつ前よりも頑丈になってないか!?」


 なんてことを不良の一人が声を震わせながら言った。


 その通りだ。

 実際には回復力が上がっただけだけど。


 本当だ。

 あのトリキングが言っていたことは本当だったんだ!!

 スキルは鍛えられる!!


 そして、時間が経ち二ヶ月後──


「なっ、こいつ……おかしいぞ!? なんで傷が一つもついてないんだよ!?」


 高校一年の十一月のその日、俺はついに身につけてしまった。


「ふん、これが覚醒か!!」


 覚醒させたスキルを!!


 どんな傷でも数秒で元通りになってしまうチートな肉体を。


「お前ら、よくも俺を半年以上いじめてきたな!!」


 怯える不良たちに向かって、俺は拳を奮った。

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