【悲報】スキル『自動回復』が覚醒した結果、不死身になったんだが?〜アンデッドマンってそれ俺なんですけど!?〜

さい

第1話

 スキル、それは十万人に一人が目覚める説明不可な不思議な力。

 魔力を消費する魔法とは違い、エネルギーなしで使うことのできる力だ。


 そんな力に俺こと榛原アサヒも目覚めた。


 スキル【自動回復オートプレーバック】。


 かすり傷を自動的に回復させるスキルだ。


 ゴミだ。

 せっかくのスキルだというのになんてゴミスキルなことだろう。


 成績不良、運動神経も悪い。


 だというのに、俺の夢は冒険者。


 おかげでいつもいつも周りからは馬鹿にされる毎日。

 本当にクソだ。


 俺の人生は終わっている。


 頭も良くないし、魔法も使えないし、将来、一体何をして生きていくのだろう。


 理由はない。


 あるとしたらストレス解消のため、今日も俺は不良たちグループのサンドバッグにされた。


 とてもじゃないが、スキルでは治すことが不可なほどのダメージを身体に負いながら、俺は雨の中、仰向けで倒れる。


 口にはしょっぱい液体が垂れてきた。


 悔しい。

 んな感情はない。

 これが運命なのだから。

 

 なら、なぜ涙が出るのか?

 痛いからだ。

 ただそれだけだ。


「本当、情けねえ……」



「【再生ヒール】」


 保健室に行き、保健の先生であるアリサ先生に傷を治してもらった。


 皮肉なものだ。

 俺のスキルは自動的に傷を治すものだというのに、【再生ヒール】で治してもらうだなんて。


「男なんだからたまにはガツンってやりなさいよ!」

「無理っすよ、そんなことしたら俺もっと痛い目あいますもん」


 勝てっこない。

 もし勝てるようなことがあればそもそも不良たちは俺をいじめたりするはずがない。


 はあ、とアリサ先生はため息を吐き。


「弱っちい男は嫌いなのよねえ」

「はいはい、別に俺は先生に好かれようと思ってません」


 傷は治ったことだし、バイトに行かなきゃ。


 俺は立ち上がり、アリサ先生にお礼をした後、保健室を後にした。


 俺は母子家庭だ。

 物心着く頃には両親は離婚していた。

 父さんの顔はもう覚えていない。


 母さんに少しでも楽してもらいたい。

 だから、俺はコンビニでバイトをしている。


 このままコンビニバイトで生きようかなあ。


 なんてつまらないことを考えてしまう。


 もう全てがどうでもいい。


 神様はなんて残酷なことをするんだ。

 使えねえスキルをよこしやがって。

 

 なら魔法を頑張れよ、スキル使えないやつでも冒険者を目指してるやついるんだぞ!!


 そんな批判が来ることは十分承知だ。

 けどな、モチベーションがねえんだよ。

 俺と同じ立場になってみればわかる。

 こんな使えねえスキルを持って尚、魔法を頑張ろうって気持ちにはならねえんだよ。


 ふん、俺は根性なしだなあ。



 いつものようにつまらない授業を受け、いじめられ、保健室で治してもらってバイトする。

 再放送みたいだ。

 きっと、周りの奴らはこの中に変化があるだろうけど、俺みたいな落ちこぼれには変化なんてない。


 友達がいねえ俺にとっては変化なんて無理だ。


 なんてことを考えてたその日、俺は知ることとなる。


 冒険者雑誌、という冒険者たちの雑誌に書かれた一つの記事。


 冒険者トリキングという名前のニワトリのマスクをしたムキムキな男のプロフィールが載っている。

 この人が書いた記事なのだろう。


「ん?」


『スキルは鍛えることにより、覚醒する!』


 大きくそう書かれた文字。


『この事実を知るものは少ないし、こんな記事読むやつなんていないことだろうからこれから増えることはないだろう。ただ、もしこの記事を読む者がいるとしたらだ。教えてやろう、スキルを覚醒させる方法を!! それはすなわち、限界までスキルを追い込むことだ!!』


 ──スキルを覚醒させることができるということを!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る