決闘
デスカと合流したアラン、『ピアニッシモ』撃破の報告にデスカは笑みを浮かべた。
「これで終わったね。アラン君」
「ああ」
「先ほど、諜報員から連絡があってね、ナチュレの地下アジト3拠点を破壊したそうだ。これでナチュレの反攻作戦は総崩れ、連中は全滅とまではいかないが、これでもう活動はできないだろう」
「隊長の無念は晴らしたさ」
「君はよくやってくれたよ。アラン君・・・・・・」
デスカは不気味な笑みを浮かべ、エンフィールドリボルバーの銃口をアランに向ける。
「デスカ?!」
「すまないね。アラン君」
理解が追いつかなかった。
どうしてデスカが・・・・・・。
「何を?」
「君は知りすぎた。機械人形のことも、ナチュレのこともな」
アランは察した。
デスカは最初から自分を葬るつもりだったんだろう。
「そういうことか!」
「ああ、私の任務は、ナチュレとこの奇怪な事件の関与者を消し去ることにある。これは貴族院の密命でね。いざという時は、君をもみ消すことも止む無しとしている」
アランは驚いた。
デスカだけでなく、貴族院までもが自分を消し去ろうとしていたのだ。
自分に近づき、ナチュレ打倒の野心に付け込み、ラムジンらナチュレ幹部と機械人形を全滅させ、都合よくなったら自分を切り捨てるつもりだったんだ。
捨て駒だった。
アランは悔しさと怒りの感情があった。
「マシンピストルを取り出すより、私の引き金を引くほうが早いよ。アラン君」
「利用してくれたな!」
「アラン君が間違っているんだ!君は自分が正義の味方と思い込んでいるだろう!それは幻想だ!」
デスカはまるで、世界の代表と言わぬばかりに誇らしげに言う。
アランは自分の中で、無念を感じていた。
「そうだろうな。僕はデスカの言う通り、自分を正義と思っていたよ。けど、そうしなければいけない時もあるさ」
アランは無為無策のままに反論した。
自分の無知を敢えて晒す上での反論だった。
「アラン君、君は面白い。君を失うのは大変惜しいね」
デスカが言い放った直後、アランはマントに隠していたナイフを落とした。
デスカの気はナイフに行った。
アランがマシンピストルをホルスターから取り出そうとする瞬間、デスカはすぐ銃口をアランの右肩に向け、引き金を引く。
アランは右肩を射貫かれた。
右肩からは出血が激しい。
「僕をごまかそうとしても無理だよ。腰に用意してある手榴弾で自分ごと吹き飛ばすことも想定内だが」
ダメだ。
デスカには何もかもがお見通しだった。
殺される。
「アラン君、君はこのまま暗闇で眠るといい・・・・・・。そのほうが楽だよ」
デスカのエンフィールドリボルバーの銃口がアランの頭に突きつけられる。
終わりだ。
ここで終わりだろう。
そう思った瞬間、火の玉が屋敷の玄関に直撃して、蒸発する。
「うおおおおおお!」
デスカは吹き飛ばされた。
「デスカ!」
何事だ。
アランは火の玉を放った方向に目を向けると、左脚を損傷していた『ピアニッシモ』がどうやらまだ生きていたようだ。
ラムジンの護衛のようだ。
吹き飛ばされたデスカは、破片らしき物が背中に刺さったまま、うつ伏せのまま意識を失っていた。
「くそ!化け物め!」
怒りに燃えたアランは携帯していた手榴弾の安全ピンを抜き、『ピアニッシモ』に投擲した。
「やああああああー!」
手榴弾は『ピアニッシモ』の腹部で蒸発し、細い肢体はその威力に耐えられず、崩れるように倒れた。
軽量化と引き換えに装甲を極限まで削ったのだろう。
パイロットは無事じゃないのは確かだ。
アランはデスカに視線を向ける。
出血はアランの右肩よりひどく、致命傷だろう。
「デスカ!」
アランはデスカに近寄ると、「構わなくていいさ・・・・・・」と最後の力をふり絞って静止させた。
「どうやら、この野心もここまでか・・・・・・」
「デスカ・・・・・・」
「行ってくれ・・・・・・。生き延びろ・・・・・・」
アランは無言のままだった。
何を言えばいいのだろうと思った矢先、何か言葉を発する前にデスカは息絶えた。
燃える屋敷、もうすぐ燃え崩れるのも時間の問題だろう。
アランは燃え盛る森の方向へと消えていく。
何も言葉はない。
燃える屋敷はアランが姿を消してしばらくしてから崩れてしまった。
アランは何処へと行ったのか?
誰も知ることはなかった。
アランは行方不明となり、フランス国内どこにもいなかったという。
果たしてこの戦い、誰も知ることのないまま、空の奥へと風化してしまうのだろうか。
フランス政府は、この機を境に、対ナチュレ用兵器開発を推進することになり、フランス軍は息を吹き返したようだが。
軽装歩兵アラン たくp @factoryidea1kojin
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