カフェ
フランス・パリ中心部、ここは平和が約束された。
第一次大戦の混乱が落ち着き、パリのカフェには牧歌的な時間だけが流れる。
スーツ姿の金髪の青年、アラン・バイエルはカフェで一休みしていた。
アランは戦争で右腕に軽傷を負い、傷痍軍人として、軍から除隊した後にパリで交易商人を務めている。
仮初の平和、しかしアランの心は平和ではないようだ。
「機械人形に出くわしたはいいが、手榴弾でも十分なダメージが与えられなかった。となると強化徹甲弾と強化榴弾を用意するしかないのか・・・・・・。あの機械人形相手ではタイマー式地雷も必要だ。M25対戦車地雷のハイエンドモデルも必要だ。そうでなければ・・・・・・」
交易商人とは思えない悩みを吐露するアラン。
彼の心の闇は深いようだ。
「お取込み中、いいかな?」
アランに謎の男性が声をかける。
赤いスーツを着た貴族の男性、体格はがっちりしており、貴族にしてはライトな印象を感じる。
「あなたは?」
「いや、このカフェはたまに来るんだよね。席がいっぱいでね。アラン君のお席をお借りしたいんだが」
この貴族、どうして自分のことを?
「アラン・バイエル君だね。元二等兵、今は除隊し『マモー商会』の交易商人を務めているようだね」
「どうして私を?」
「いやー『マモー商会』にはいつもお世話になっていてね。そこでたまたまアラン君の話を聞いたんだがね」
貴族にしては軽い口を利かせる中年男性、誰なんだ。
「おっと、自己紹介が遅れた。私はデスカ、フランス軍の軍人なんだがね」
「失礼ですが階級は?」
「ああ、大佐だよ。しかも情報将校でね」
貴族でありながら大佐の役職、デスカを名乗る人物は意外にも大物だった。
こんなライトな人物が大佐とは思えなかった。
「大佐、私は・・・・・・」
「ああ、そういう堅苦しいのはなしだ、デスカでいいよ」
「デスカさん」
「さんはなし、呼び捨てでいいよ。それに敬語もなしだ。貴族だからとか、階級とは気にしないでほしいな」
珍しい。
貴族にしては随分平民相手にフランクで、軍人にしては軽い、軍の異端児だが、実は優秀なのだろう。
「では遠慮なく、デスカはどうして僕のところへ?」
「実はね、君を軍人、傭兵として再雇用したいんだが・・・・・・」
「再雇用?もう戦争は・・・・・・」
「ああ、第一次大戦はね。だけど、フランス軍は、単刀直入に言うが宇宙人さんと戦争しててね」
アランは顔を歪めた。
宇宙人と戦争?
何を言っているんだ。
「デスカ、冗談は・・・・・・」
「機械人形と呼ばれる兵器、各地で奇妙な事件を引きおこしていてね・・・・・・」
アランの表情がこわばる。
機械人形、デスカは知っているのか。
「なぜ機械人形を知っている?」
アランは小声で質問を投げると、「僕は彼ら、彼女らの正体を知っているんだがね」と返した。
「冗談だろ・・・・・・」
「事実だよ。アンノウンエネミー、『UE』と呼ばれる、ある種の異星人だ」
アランは知っている。
機械人形のことを、ラムジンという怪人のことも・・・・・・。
「実はね、フランス軍の西部戦線の辺境基地、ジャン・クロード軽装歩兵小隊、君が所属していた部隊だが、機械人形に襲われたのを知っているよ・・・・・・」
「デスカ、どうしてそれを・・・・・・」
「君のことを調べるのが仕事でね。しかし、ジャン・クロード少尉は惜しいな。フランス軍軍人としては立派だったよ。昔、一緒に紅茶も飲んだことがあったけどね」
「どうして僕を・・・・・・」
「君の力が必要だ。憎いだろ?UEが?」
アランは沈黙する。
「君の目を見れば分かる。ジャン・クロードとその部下、君の上司と同僚の敵を打ちたい。それに、機械人形を退治する義勇軍が集まらくてね。僕も困っているんだ。考えてくれないか?」
「デスカ、正直に言っていいか?」
デスカは静かに頷いた。
「僕は機械人形を追いかけている。そしてすべての機械人形を破壊したい。けど軍には所属しない。僕の意思で動く」
「それなら、独立した形で、対UE同盟結成が近道だね」
「この話は誰にもしていないな?」
「アラン君だけだよ」
アランは手を差し伸べて、握手を求める。
「話に乗るよ。デスカ」
「安心だな。用心棒君」
デスカも手を差し伸べ、握手する。
「あ・・・・・・デスカ・・・・・・」
アランは控えめに何かを伝えようとする。
「なんだ?遠慮はいらないぞ」
「武器・弾薬のサポートが欲しい。裏ルートでM25タイマー式地雷のハイエンドモデルを取り寄せているんだが、数が足りない。支援してくれないか?それと対戦車ライフルの強化榴弾も支援してくれるとありがたいんだが」
デスカは笑いながら、「そういうのは気軽に相談してくれていいよ」と返す。
昼下がりのパリでアランとデスカは奇妙な関係を構築し、仮初の対UE同盟が結成されることになった。
UE、そしてラムジン、機械人形、すべてがつながった中でアランは自らの信念を貫くため、新たな一歩を踏むことになる。
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