地下
フランス・パリはバスティーユ広場。
かつて、ここはバスティーユ牢獄と呼ばれた要塞であった。
1600年代には刑務所として使用され、政治犯や精神病者など含め5000人以上もの囚人が静止した薄闇に閉じ込められた。
バスティーユ牢獄は、襲撃の後に解体され、1919年では広場として活用されている。
しかし、奇妙な噂がある。
バスティーユ牢獄が存在した頃、秘密の地下工場があったという噂があった。
それはフランス革命の頃、一説には金銀やダイヤモンド、財宝などを秘匿する地下倉庫として活用されたとしている。
しかし表向きは地下工場という形で語られ、地下鉄工所が実在するらしいが実際にも詳細不明だった。
しかし、歴史と空気だけは知っていた。
バスティーユの地下を行く謎の魔物を・・・・・・。
ラムジンだ。
「畜生・・・・・・あの歩兵、どうしてあんなところに・・・・・・」
ラムジンは苛立っていた。
謎の歩兵に攻撃され、『フォルティシモ』を破壊させられたのだから・・・・・・。
「アルスバッハ!ルビー!キャル!いるのか!」
ラムジンが呼ぶと、ゴリラの魔物・クモの魔物・猫の魔物が薄暗い地下から現れる。
「男爵閣下、歩兵に襲われたと耳にしました。どのような人物が男爵閣下を阻まれたのか・・・・・・」
見た目はゴリラでありながら、貴族のスーツを着こなす怪人アルスバッハは頭を下げながら尋ねる。
「分からないが、歩兵だった。軍服から察してフランス軍だろう」
「随分、情けわいわね。歩兵なんか踏みつぶせばいいじゃん」
猫の怪人キャルは軽く批判した。
猫耳以外はほぼほぼ人間の見た目だが、右腕にはダイヤモンドが埋め込まれており、異形ではある。
「まあ子猫ごときはともかく、男爵閣下が手こずるとは困りましたね」
クモの怪人ルビー、狡猾で残虐性のある女傑だ。
「誰が子猫よ?」
キャルはルビーを睨む。
「今、私と話している怪人のことよ。何、自分が子猫であることも知らないの?情けないわね」
「うっせえ、クモ女。ダイヤモンドナックルでひき肉にすんぞ。まあ、クモのミンチ肉なんて役に立たないけど」
このルビー、キャルはものすごく仲が悪く、どんな小さいことでもそりが合わないようだ。
「まあまあ両者とも心の剣を収めるゴリ、お疲れの男爵閣下を困らせるのはよろしくないかと」
アルスバッハは冷静に両者をクールダウンさせる。
「ふん!」
「けっ!」
ルビーとキャルは気に食わない表情を浮かべる。
「お前たちは呑気すぎる。これから各地で大規模騒乱作戦を起こすというのに、お前たちがその体たらくじゃ話にならないぞ。まずはあの歩兵を探り、ただちに抹殺しろ!それからしばらくしてフランスの地方基地を襲撃し、このバカの国を無力化させる」
ラムジンはイラついていた。
愛機『フォルティシモ』をたった一人の歩兵が大破させたのだ。
「自分は男爵閣下の意向に賛成ゴリ。偽りの貴族どもに我らこそが真の貴族であるということを教えてやらなければなりませんな。無力化した後、我らがこの国を統治する。感嘆の極みゴリ」
「すまねえなアルスバッハ、お前には作戦計画を練り直してほしい。『フォルティシモ』の修理も必要だ。ルビー、機械人形の総合メンテナンスをお前に一任したい。そして、キャルには重要任務を与える」
キャルは目を輝かせた。
「何々?」
「まあ、そう焦るな。金髪の軽装歩兵を探せ。対戦車ライフルを持った野郎だ。ただし機械人形は使うな。まだ俺たちは地上に姿を現すには早い、隠密作戦・暗殺作戦はキャルの十八番だ。慎重に頼むぞ」
「はいはーい。キャルちゃん、頑張りまーす」
キャルは上機嫌でルビーに近寄る。
「クモおばさん、これからは楽をさせてあげるわ。あんたの機械人形もちゃんと整備しておきなさい」
キャルは高笑いをしながら去っていった。
「ルビー、気にするなよ。キャルはああ見えて任務とお前のバックアップは忠実にやるさ。いざという時はお前の出番だ。頼むぜ」
ラムジンも薄闇への姿を消す。
「ふん、猫女が足手まといになりましてよ、ラムジン男爵・・・・・・」
ルビーは苛立っていた。
「ルビー殿、お怒りはごもっともですが、我々には、このフランスの地で我らの英知を世に知らしめる役割がありますぞ。大義に準ずる以上は大事に触ることはお控えいただきたい」
アルスバッハはきつく注意をする。
「アルスバッハは、貴族の誇りを重んじているのね。まあ私は人間を殺せればいいけど」
「ラムジン男爵に申し上げた通り、我々こそが真の貴族になる存在、その大義の実現こそ、我らのあるべき姿であるかと・・・・・・」
ルビーはアルスバッハに対し、「貴族の大義、ですのね・・・・・・」と返す。
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