桃太郎の正体

 深夜、泥酔して帰宅した桃太郎をおじいさんとおばあさんがたたき起こした。

「桃太郎、何だいこれは?」

 おじいさんは部屋にあったケースを開けた。中身は金銀財宝であった。おばあさんが桃太郎に詰め寄った。

「会社のお金に手を付けたのか?」

「これは、自宅で保管してほしいと頼まれただけで、金銀財宝とは知らなかったよ」

 おじいさんはまだ難しい顔のまま。おばあさんはしくしくと泣き始めていた。

 泥酔して帰宅して日に家族を泣かせるだなんて、いったい、俺は・・・・

「ひょっとして俺は鬼だったの?」

 気が付くと自宅周辺を警察車両が取り囲み、投降の呼びかけが始まっていた。この気配に気づくとおじいさんが窓ガラスをがらりと開けて外に向かって叫んだ。

「たすけて〜。わしはここじゃよ〜」

「なっ!!」

 予想外の出来事に呆然とした表情の桃太郎はその場に立ち尽くしていた。

 パトカーの赤色灯が照らし出した桃太郎のシルエットはまさに赤鬼そのものであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

吉備団子が美味しくてたまらない 乙島 倫 @nkjmxp

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画