秘密漏洩

 桃太郎は夜の飲み屋に来ていた。指名は犬原である。

「この間、出張精算してたら、間違って、飲み屋のレシートを出しちゃってね。それを見た花坂さんがマジギレして、大変だったよ。あと、この間、金太郎の外注先にトラブルがあって、ざまあみやがれ〜って感じだったね」

「ワンワン、桃太郎さん次の課長になりそうだワン」

「犬原、おれ、会社辞めて、別の会社に行くかもしれん」

「そうなんですか。転職しても、会いに来てほしいワン」

「まだ、決まってないんだけどね」

「くーん、くーん。お伽商事の社内機密が見たいワン」

 まあいいか、辞める会社だし。

「えっとねー。パスワードは・・・」

「ありがとうワン」


 犬原は自宅に戻ると専用端末を取り出し、キーボードを高速連打し始めた。お伽商事の機密サーバーへアクセスし、二重帳簿を発見した。

「こちら犬原。潜入捜査先の裏帳簿を発見しました。工場の建設仮勘定の経理が不適切です。不正経理で取得したと思われる金品にはGPS発信機を付けています。至急パトカーを手配願います」

 犬原は犬のお巡りさんならぬ、犬の潜入捜査官であった。お伽商事一斉捜索が行われようとしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る