活動休止

 桃太郎が鬼ヶ島エンターテインメントを訪問すると、担当の鬼岡が鬼ガールズのサインを渡した。

「すいません。こんなことまでしていただいて」

 鬼岡はにこやかな笑顔のまま答えた。

「大したことないですよ。ついでといってはなんですが・・・」

 鬼岡は桃太郎に封書を渡した。中身は鬼ガールズのライセンス料値上げについてであった。値上げ幅は従来の2倍であった。

「何ですか、これは?私に渡されても困るのですが」

「ははは、いまさら、何言ってるんですか?」

 桃太郎の当惑する姿とは裏腹に、鬼岡の笑顔はいっさい崩れなかった。

 鬼ガールズのサインをわざわざ用意してくれたのはこのためだったのか?こいつら本当に鬼だと桃太郎は思った。


 その日の晩、事件が起きた。鬼ガールズのライブの最後、鬼美がカツラを脱いでファンに謝罪した。鬼美は鬼ではなかったのだ。鬼美はファンをだまし続けるのが辛いとの思いからの行動であったが、結果として鬼ガールズは活動休止となった。

 お伽商事のCMからも鬼ガールズは消えた。桃太郎にとって九死に一生であった。

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