上野公園

「サルカニ商事から来ました蟹山です。趣味はカニ歩きです」

 朝礼で、猿田の転職先のサルカニ商事から中途採用の蟹山が挨拶を行っていた。配属先は桃太郎チームである。年齢も二十代でまだまだ若い。何より、猿田と雉山が抜けた穴を埋めてくれると期待が大きかった。桃太郎はさっそく蟹山をOJTに連れ出した。

 上野公園での飛び込み営業である。

 季節は梅雨入り前の行楽日和で、上野公園には行楽客が芝生やベンチで昼ご飯を食べていた。そのグループや家族の近くまで行き、吉備団子を売り込むのである。

 蟹山がグループの近くで吉備団子を食いまくり、公園内の露店で吉備団子が販売されることを、声を出して伝えるのである。なるべく、不自然にならないよう、3本セットで350円であることが宣伝できれば良いのである。

 桃太郎は池の向こうからこの様子を伺ってた。蟹山は食べるふりでいいといったのに、本気で吉備団子を食べていた。

「ちょっと多すぎるぞ。大丈夫か?蟹山」

 桃太郎の心配をよそに、蟹山は吉備団子を食べまくり、しまいには泡を吹いて動けなくなった。

「あいつ、無理しやがって・・・。いや違う。きゅうきゅうしゃー」

 蟹山の配属直後、蟹山はいきなり病院搬送されてしまった。

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