ただ漠然と、漠然としている。

@RuiRuiSeda

第1話 「虹を見たかった。」

ずっと前にね、誰かが言ってた。


「虹は、悲しいことや辛いこと、苦しいこと。それらを乗り越えたときに、遠いお空のそのまた奥に、姿を表すんだよ」


私は、虹を見たことがない。

どういうものなのかもわからない。

でも、その言葉だけはなぜか頭に残っていて、離れなかった。

どんな辛いことがあっても、いつかお空に大きな大きな「虹」が出てきて、頑張ったねって、頭をなでてくれるときがくるのだろう。

私は、虹が見たい。

どうすれば見られるのかな。

この、無限に広がる大きな青空の、どこに出てくるのだろう。

ぽわって、突然出てくるものなのかな。それとも水に溶けた絵の具みたいに、じわーって、浮き出てくるのかな。

どんな見た目をしているのかな。

人の形かな。それともかわいい動物?ひげをはやした神様?だったりして。

そもそも、虹って、手は生えてるのかな。

こんなふうに手を伸ばしたら、そっと、繋ぎ返してくれるのかな。

温かいのかな。

そうだといいな。

虹を、見てみたいな。

虹と、会ってみたい。

そんな、私が、いる。


でもさ。

そんな、私は、さ。

私はさ。

まだ、頑張れていないのかな。

こんなに辛いのに。

こんなに苦しいのに。

こんなに悲しいのに。

寂しいのに。痛いのに。きついのに。

出てきてくれない。

どうして?なんで?

こんなに頑張ってるよ、私。

一生懸命生きてる。

あなたに会うためにいっぱい頑張ってる。

ちゃんと負けずに、頑張ってた。

どうして?

あなたが姿を見せてくれれば。

あなたを感じられれば。

私はそれで良かった。

それなのに、それなのに、どうして。

どうして。

あなたは、最後まで。


あなたが、「頑張ったね。」って。

「えらいね。」「すごいね。」って。

それだけで、よかった。

それがあれば、私は。


こんなことまで頑張らなくても、良かったのに。





第1話 「虹を見たかった。」      

                      

                  

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