第6話 中立国【エデン】
「ゴ、ゴブリンってこの世界ではめちゃくちゃ危険な魔物だったの!? そりゃあれだけ強い訳だよ…」
森を抜け、ちいさな国へやって来た僕達は――近くの冒険者ギルドで登録を行うと、宿の一室であいちゃんと話し合いを行っていた。
「認識を改める必要があるかも……まさか、ゴブリンはそこまで驚異的な存在だったなんて…」
どう考えても先ほどまで遭遇していた獣型の魔物の方が数は多い気がした、しかし…この世界では群れを作り”ジャンクナイト”と呼ばれるものを駆使するゴブリンの方が、人間の盗賊団よりもたちが悪いらしい。
「おまけに…人間は食料か…あいつらにとっては家畜でしかないと」
「…そうらしい」
ズシンッ…ズシンッ。
「それに踏まえて…全っ然寝れないんだけど!!」
この街にやって来て早一週間、僕の睡眠時間は日に日に短くなっていった。
なんせ―――
窓を開ければ、そこにはロボットが物を運び、冒険者のほとんどはロボットに乗って依頼を受けるらしい。
なんとか国から拝借した財宝を怪しげな所で売り払い金銭面に余裕ができたかとおもったが、アレを買うにはそれなりの資金が必要になるらしい。
――
所謂量産タイプの駆動兵器で、対”魔獣”用の戦闘兵器。
マナの多さで駆動時間が左右されるらしく、その質が高ければ高いほど駆動時間も増える。
しかし、貴族や選ばれた者だけが所有を許された、
「ギアショップとやらに足を運んでみたけど…最低ランクの
今の僕達の全財産は500万G。
日本円にして500万円程、王都の金銭をこちらの通貨に交換すると半額以下になってしまうらしく…それはもうお金が無く困っていた。
中立国”エデン”、今僕達がいる国の名前だ。
中立国といえば聞こえはいいが、ほかの国の通貨は全て半額以下
―――金銀財宝ですら買い叩かれる始末。
街の住人達に聞いてみれば、ここは国を追われた者―――そして自由を追い求める存在が集う国だときいた。
意外と治安も悪くなく、様々な種や色んな形をしたロボットが街を行き来している。
それだけ力がある国という事だろう――僕達のような訳ありの存在でも気軽に受け入れる程の場所である。
ただし―――
この国に住まう人間や他の種族はほかの国へ移住する事は不可能になる。
なんせ中立を誓い、この国の住民となる代わりに強大な力を持った者達に守られる―――その代わり、僕達はこの国と死ぬまで共にあると誓った。
「まぁ…即決に近かったけどね? いい国だよ、ここは…」
「うん……人も暖かい。 それに…種族に関係なく…皆仲良くしている」
流石は楽園と呼ばれるだけはある…ある種、僕達が過去に求めた理想に近い形の場所なのだろう。
しかし、小国とあって―――色々と大変な一面も見えて来た。
「ギアショップのおじさんが言うには、資源の供給が少ないせいで…大変だって聞いたもんね」
「…うん。 基本的には周囲の森やダンジョンから生まれるもので…この国は成り立ってるらしい……けれど、ほかの国の領土へ侵入する事は禁止されいている」
限られた範囲と、その物資だけでなんとか生活しなければいけない…訳だ。
「なら、僕達に出来る事は…あらゆるダンジョンを攻略しこの国を豊にする事だね」
「うん………ダンジョンは色々と資源の確保が出来る……けど…」
「ゴブリン…あれが居座ってるせいで攻略の難度も上がっているわけか…」
この世界のゴブリン達はズル賢く、ダンジョンの魔物達相手に消耗している所を狙ってくるらしい。
実に厄介な魔物だ。
「とはいえ、まずは―――」
「うん………」
―――――――――――――――――――
結局400万G使ってしまった僕達は、近くの広場で
「ぐぉ…意外と難しいな…集中してないとバランスが崩れそうだ」
現実はそう簡単な話もなく、やはりというべきか
内部構造は機械的な見た目をしているが、球体の操縦桿を握り身体のマナを機体へ流す事で身体の一部かのように操縦する事が出来る。
ただ、このクセが強く―――僕の場合は力をかなり抑えて操縦しないとすぐにバランスを崩しそうになる。
「身の丈にあった…機体を選べか…そりゃそうしたいよ! けど、僕達はお金がないんだって! ぐはっ!」
バタンッ!
バランスを崩してしまった僕はそのまま機体ごと地面に倒れてしまった。
「大丈夫? ゆうくん?」
気付けば近くにあいちゃんがやってきた。
流石はマナの使い方が上手いあいちゃんというべきか、圧倒的に性能が低い
「…これが脳筋ゆえの……宿命か……」
いままでマナ容量と力だけでごり押してきた僕からすると、これはそうとう難しい課題なのかもしれない。
もうちょっと師匠に柔軟なマナの扱い方を学んでおくべきだったと今更後悔する僕。
しかし、この世界で生きていく以上――なんとしてもこいつを使いこなさなければ――――
「よーし。 頑張るぞ―――」
気合を入れなおそうとなんとか立ってみせる僕―――しかし――
ガタンッ!!
「ゆうくん!?」
無理やり機体を動かしたせいか…はたまた僕のマナの乱れのせいなのか。
機体は仰向けに倒れた。
バタンッ!
「おい! ドタドタドタ、うるせぇぞ! 格納庫近くで暴れんじゃねぇ! 次やったら宿の主人に言いつけるからなぁ!」
見知らぬ男が窓をあけそう叫ぶ。
「す、すいません! ちょ、ちょっと
「ふん…ほどほどにしとけよ?」
「はい。 そうします……ぐっ……あいちゃん。 まじで壊したらごめん……」
「…いっしょに…がんばろうね……?」
「うん………今、僕…泣きそうかも」
――――まだまだ先は長そうである。
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