EP05 拠点生活開始?
この世界にやって来て1週間と5日…疲労困憊になりながらもなんとか歩き続け…俺達は目的の場所へとやって来た。
「かなり深い森の中に…焼野原が一つ」
「あはは…なにこれ? 現実?」
目の前に広がる光景に俺達は絶句した。
7mはくだらない大きな樹木をなぎ倒し、綺麗な円を描くようにくりぬかれた場所の中心には俺もよく見慣れた支援用端末が一つ。
しかし、もっと意味が解らないのは…端末に群がろうとした魔物?なのだろうか、巨大な化け物達が白目をむき辺り一面に倒れていた。
「うっぷ…気持ち悪い感じ…」
「こりゃひでぇ…」
焦げ臭いにおいと死臭もひどく最悪な気分だ。
まぁ、けど…あそこに行かない事には話は始まらないんだよな…俺は恐る恐る死体の山々を踏み越え、端末の方向を目指した。
「うげぇ…やな感じ…」
「大丈夫だ。 全部死んでるから問題はない…が…」
なにより臭いがきつい…さっさとなんとかしないと俺も気を失いそうなレベルだ。
こんな事なら作業用マスクを要請するんだった。
そして―――
ピピッ
『艦長の到着を確認―――認証―――開始————』
ピッ!
『完了。 これより、地上拠点用端末の起動を開始———しばらくお待ちください』
「なんだって? 地上拠点用端末?」
『はい。 地上拠点用端末――という事らしいですが?』
と二人そろってちぐはぐな会話をする…というのも、俺の支援用ナビゲーションシステム”ナビ”が言うには、この世界に来て突然意味の解らない機能が増えたらしい。
この地上拠点用端末もそのひとつで、起動してからのお楽しみという感じ。
「ってことは、何かが起こる?」
『———解りません。 激しい駆動音を発生していますが、今のところ警告はありません』
「ねぇ、大丈夫な感じ? なんかすごい音がし始めたけど!?」
「さぁ…どうなんだろな」
「本当に大丈夫な感じなんだよね!?」
グルグルグルグル!!
と上部から現れたシリンダーが青い光を発生させながら勢いよく回転をはじめる。
ガタガタガタ!!!!
おっと…これはやばくないか!? なんか、壊れかけの古い洗濯機のような音を始めたが!? 大丈夫か!?
「お、おい! ナビ! 本当に大丈夫なんだろうな!?」
『———大丈夫―――です。 おそらく―――』
「お、おい! いま、多分みたいなこと言ったろ!? あの間はなんだ!? おい!」
「真央! やばいかも! なんか爆発しそうだよ!?」
「へ!?」
由紀の言葉を聞いてすぐさま端末の方をみつめる…たしかに…ぶっ壊れそうな気がする!
「よし…撤退!!」
「お、おっけ~!!!」
猛ダッシュで強い発光をはじめる端末を尻目に大きな木の幹に隠れる俺達は、様子を見る。
ガタガタガタガタ!!!
そして――――
「うわっ! なんだ、この光―――」
「なんやばいって! めちゃくちゃ光ってる感じが―――」
―――――――それから暫くして。 あれだけ鳴っていた騒音が突然止んだ。
「———あれ? 何も起こってない感じ?」
「———ど、どうなった?」
恐る恐る目を開ける…そういえば、あの焦げ臭いにおいも全くしなくなった気がするな?
いったいどうなった――――
「な、な、な、な、なにこれ!?」
「…まじかよ」
なにあれ? 更地?
目の前には綺麗に補装された平たい土地と、その中心部には見た事もない機械端末が設置されていた。
『拠点用端末の設置完了――――機能を使用するために認証を開始してください』
「認証?」
「真央? どうしたの?」
一度、由紀の方をみて考えてみる…異世界に来て俺一人ならば拠点等後から用意すればいい。 しかし、俺と一緒に居るのは”普通の生活を送って来た人間”だ。
俺とは違って、劣悪な環境で育った知識や経験もない―――考えるまでもないだろう。
「ちょっと! 真央!?」
恐る恐る足を進めた俺は端末の前までやってきた。
なんというか、昔こういうテーブル型の形をした音ゲーをやった事がある気がする。
「なんというか…こんな辺鄙な森の地面から端末ってなんだよ。 異質すぎんだろ」
試しに引っこ抜いてやろうと地面から棒状に伸びる部分を引っ張ってみたが、びくともしない。
「まじで…どういう仕組みだよ…ぐぬぬぬ…」
さてと、色々諦めてさっさと”認証”とやらをしよう。
ピピッ…グォーーン…
端末に俺の手が触れると同時に駆動音の様なものが聞こえた気がした。
暫く待っていると、ディスプレイと思われる部分が発光を始める――
『認証をお願い致します。 こちらのディスプレイに手の平を置いてください』
「おぉ~! すごい感じじゃん! こ、これが真央が言ってたナビさんの声!? なんか綺麗な女の人って感じの雰囲気だね!」
「あぁ、そうだな。 とはいえ、こいつに身体はないんだがな」
おそらく端末からする音声に反応したのだろう。
というか、こっちの音声は駄々洩れなのかよ!
ピッ…ピピッ。
『認証中――――尚、手を離された場合は再度認証の必要がありますので――認証完了まで暫くお待ちください』
「はいはい…」
『後ほど、綾坂由紀様にもこちらの端末で認証を行って頂きますので待機をお願い致します』
「は、はい!!」
暫く、ナビに待たされる事数十分。 なにやら、色々と準備する必要があるとの事で俺達は端末の近くで座って待つことにした。
「ねぇねぇ真央」
「ん?」
「わくわくする感じだね!」
「………ははっ…そうか? いや、まぁ…そうだな」
ある意味、俺達はこの世界にやってきてよかったのかもしれない。
――ピピッ。 ガチャン…ガタガタガタ…ガチャン。
『登録完了致しました。 周囲のスキャンを開始致します。 お待ちいただいている間―――お暇かと思われますので、こちらの端末をお受け取り下さい』
ガチャ!
端末のディスプレイ部分が展開すると、そこには見たこともない位…薄っぺらい透明な板の様なものが入っていた。
なんだこれ? 見た事ない装備だな…
「これは?」
『腕に装着するタイプの端末です。 人体に害はありませんが、どうやら肉体と一体化するゲル状の素材で出来ているらしい物なります――――注意点としては――――』
「わぁ…なんか冷え冷えシートみたいな見たいな感じゃん! こうやって額に着けると~!」
「お、おい! ちょっと待―――」
『張った瞬間。 肉体と同化………』
説明を聞く前よりも先に由紀の奴がゲル素材のそれを額にピタッと張ってしまった。
「へ?」
「…………」
ピッ…
額に貼られたそれは”ディスプレイ変わり”になる物だったんだろう。
健康状態や、周囲の気温・湿度…あとはMAPのようなものも表示されていた。
「で、この場合は額の皮膚でも剥がせばいいのか?」
「…ちょ、ちょ、ちょ…ちょっと待って! なくなったんだけど! というか、まって! 皮膚を剥がす!? やだ! 痛いのはやだぁ~!」
――――――終わったなあいつ。 と思っていたが、腕とは別の部分に貼ると”1度”だけ剥がす事が可能らしく。 なんとか剥がせたと報告しておこう。
なんだか、2人での拠点生活が不安になって来た。
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