EP07話 拠点発展中

「はぁ…はぁ…はぁ…いや!! こんなの伐れる訳ねぇだろ! おい!」

『ファイト~艦長、いえ―――村長』

「な~にが村長だ! おらぁ! 見てみろ! 俺の後ろはただの平地だぞ!」


後方のだだっ広い平地を眺めながらぼやく俺と―――


「よーいしょ!」


ゴンッ!!

ググググ…バタンッ!!


魔女姿の女が一人―――俺の百倍以上のスピードで巨大な木をなぎ倒す。

俺は思う―――


「…もうあいつ一人でいいんじゃないか?」


と。

『ふむ。 そうですね―――艦長は論外です』

「うっ…普通に傷つく…」


とはいえ、本当にその通りなのだからぐうの音もでない。

俺が木を一本も伐れない中――既に10本位伐採完了している由紀さん。

どちらが役立たずなのか明白。


『では、そんな艦長に提案です。 資材回収用バックパックと木材加工用の装置を要請してください。 そちらの作業に集中致しましょう』

「いや! だったらなんで、俺にこれをやらせたんだよ!」


普通の鉄製オノを振り回させた理由はなんだ!


『いえ。 2人の方が効率はいいではありませんか”普通”』

「……………………そうですね」

『というわけで、由紀さん。 伐採の方はお任せ致しました―――私と艦長は木材の加工と建物の建設を開始致します』

「ん? おっけ~! 私にまかせなっ!!」


そういえば、由紀のやつに小型インカムを渡したおかげでナビの音声が聞こえるようになったんだったな。

さて、邪魔者は仕事に取り掛かるとしようか―――


俺は”資材回収用バックパック”を要請し、背中に全長1m程のバックパックを背負う。

こいつは元々、資材の回収やガラクタ掃除等に役立つ便利キットの一つだ。

もとより…戦いが激しくなってきてからは使用頻度が日に日に減っていき、気付けば倉庫の奥深くに眠っていた。


「というかさぁ…こういう便利な物は使えるのに、”ブレードソー”とかの使用は不可能なんだよ?」

『———武器扱いになってしまうからではないでしょうか? おそらく、この拠点レベルというものは―――それらの機能をアンロックするために必要なものではないかと』


拠点レベルねぇ、今現在俺達は端末の指示に従って木材を集めている訳だが、それで最初の”家”を建てろとの事。

元々こういう機能がなかった気がするが、なにやらクラフトゲームの様な仕様に変化している。


「文明レベルもどこまで落ちてるんだよ。 木材の家って…しかし…」


右腕を見つめると次の瞬間ディスプレイが表示された、どうにもこの拠点を拡大していくことで戦艦の機能や設備が充実してくると、ご丁寧にも記載されている。

なんだこの…ゲームみたいなテキストは!!


いつ見ても不思議な感覚だ。

おっと、話はそれてしまったが…結局の所今現在使用可能な装備は【資材回収用バックパック】と【木材加工用装置】、あとは俺だけにしか使えない戦闘用装備の3つだけ。


今俺の手にある鉄製のオノも、あの”拠点管理端末”から出て来た…所謂おまけのようなものらしい。


とりあえず周囲に散らばる木々を回収するとしよう…

「起動!」

『資材回収用バックパックの起動開始——』


ビビッ!

突如エラー音が鳴る。


『原因不明のエラーにより全6基のアームのうち2基のアームのみ使用可能です』

「エラー!? どういう事だ?」

『解りません。 ですが、何らかの影響により使用制限が掛かっているもの思われます』

「げっ…そのへんも結局拠点レベルをあげろってことか?」

『おそらく。』


はぁ…まぁこいつが使えるだけありがたいと思うしかないだろうな。

現状の俺はどこからどうみてもただの役立たずな訳で…ちょっとは役に立たないとな。


「よーし、由紀。 木材の回収は俺に任せろ! この資材回収用バックパックで向こうに運んでおくからな」

「うわっ! なにそれ! 背中から腕みたいなのが伸びてる感じ!?」

「ん~…腕というか。 アームというか。 まぁ、数百トンレベルの重い物でも動かせる代物だ!」


おまけに太陽光発電機能を有した環境にやさしいバッテリー可動だ!

ただし、こいつの欠点は重い物を運ぼうとすればするほど…バッテリー消耗が激しく直にバッテリー切れを起こす所。

つまり、無理をするとすぐに機能停止するのでそこは注意。


その後、俺は木材を所定の位置へ運び終わると次に木材加工用装置と呼ばれるものを要請する事にした。

というか―――


「え? これって…ガイドに従って要請すればいいのか?」


つまるところ、この木材加工用装置も初めて目にする…なにやら緑色の3Dガイドが表示されているが…これは腕のディスプレイに映る【設置】と書かれたボタンを押せばいいのだろうか。

気になる箇所があるとすれば 【木材加工用装置】0/1 という所。

おそらく、1つのみしか設置できないだろう。


それにしても…木材加工用装置には素材が必要ないらしい。

他の項目に目を通すと【木材×〇】等書かれているが―――あと…


―――木材加工用装置―――

木材を加工するための装置。 

火力発電で可動する装置であり、可燃物であればなんでもエネルギーに変換する事が出来る。

※木材を燃やす事で可動させる事も可能※


「つまりなにか…木材を取って。 その木材を燃やしながら木材を加工しろと?」

『でしょうか』


なんだよそれ! 文明レベルは落ちているクセに変なところだけ最新鋭の技術にするんじゃねぇ!

文句を言いながらも装置を設置した俺は運んだ丸太をディスプレイの指示に従いながら加工するのであった。


「というか…木材の加工って寸法の指定から!?」


なんでこういう所だけリアル志向なんだよ!

とりあえず木材を指定数あつめたら家が出来上がるとかさぁ、もうちょっと色々あっただろ!


『今から指定致しますので、それ通りに加工してください』

「ちなみにナビからの遠隔―――」

『ありません。 全て手動です』

「ですよね…」 

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