第27話 顕乗は神様を信じる?信じない?

「そ、そっか。卑弥呼ひみこさんか。それはさすがに恐れ多いね」


 由佳は、あまりに有名な偉人の名前を出されたので、気後れした。


由佳ゆかって苗蘇神社びょうそじんじゃの猫の神様とお話したのよね? 神様の声ってどんな声だったの?」


 かえでは興味津々だった。

 そしてそれは楓だけではなく、狗巻いぬまき静子しずこ叡斗えいとも同じだった。


「えっと、まず、とても困っておられて──」


 由佳がそう説明すると、全員「え? 神様が困ってたの?」と驚いた。


「それに語尾は「~ニャ」だった」


 それを聞くと全員が大笑いした。


「ほ、ほんまに? ほんまに神様の語尾が「~ニャ」やったん?」


「まあ、ある意味、期待通りだニャ」


 叡斗が神様の語尾を真似て茶化した。


「か、かわいいっ。わたし、ますます神様のことが好きになったかもっ」


 楓は愛くるしい神様の姿を想像して、うっとりとした。


「それより神様が困っていたというのはどういうことだ?」


 狗巻は、由佳が神様が困っていたと言ったことを問とい質ただした。

 そのことが神様がいなくなられたことに関係しているのではないかと思ったからだ。


 そのことを問われた由佳は、これは全員に例の1万円のお賽銭のことを聞くチャンスだと思い、意を決して聞いてみた。


「そのことなんだけど、みんなに聞きたいことがあるの。お願いだから正直に答えて欲しいんだけど、この中に、苗蘇神社びょうそじんじゃに1万円のお賽銭を入れた人っている?」


 そう言われて全員が顔を見合わせた。

 狗巻も、楓も、静子も、叡斗も身に覚えがないといった様子だった。


「1万円をお賽銭に入れるなんてすごいな」


 叡斗が率直に感想を述べた。


「そのお賽銭がどないしはったんや?」


 由佳はそのお賽銭の影響で神様が急に大きくなり、身動きがとれなくなったことを説明した。


「それを由佳がお助けしたのか」


 なるほどな、と狗巻は納得した。


「わたしがもっとちゃんと神社をお掃除していればよかったわね」


 楓は少し責任を感じた。


「みんなの中に、1万円のお賽銭を入れた人がいないんだとすると、じゃあ、やっぱり顕乗けんじょうさんがお賽銭を入れた人なのかも……」


 急に兄の名前が出てきたので、楓が驚いた。


「えっ? お兄ちゃんが? なんで?」


 説明の為に、由佳は願い事の内容もみんなに明かすことにした。


「それは1万円のお賽銭でされた願い事が「おなじくらすのきふねゆかに、じぶんのおもいがとどきますように」というものだったからよ」


 それを聞くと、全員が神妙な面持ちになった。

 狗巻も、楓も、静子も、叡斗も由佳に対して好意を寄せていたからだ。


「それでなんで顕乗けんじょうさんが、お賽銭を入れた候補者になるんだ?」


「顕乗さんと私が、ワンフィールドのリーダークラスだからよ」


「えっ? そのクラスも該当するのっ?」


 楓は、自分もワンフィールドのリーダークラスのひとりなので面食らった。


「でも、お兄ちゃんは違うと思う。お兄ちゃんは絶対にお賽銭箱に1万円なんて入れたりしないわ」


 迷いのない様子で楓が断言するので、由佳は疑問に思った。


「そうなの? なんで? どうして顕乗さんは絶対にお賽銭箱に1万円を入れないの?」


 楓はゆっくり答えた。


「それはね──

 お兄ちゃんは神様を信じていないからよ」




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今回のお話はどうでしたでしょうか?

(,,•﹏•,,)ドキドキ


ご意見やご感想を是非いただきたいです!

宜しくお願いします!


皆さまに「面白い!」と思っていただけるよう、もっともっと頑張りま~す!

୧(˃◡˂)୨

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