第26話 貴船 由佳は女王様

「力が弱い。ぜんぜん効いてないよ。もっと強く揉んでよね」


 今度はかえでがソファの上で両手両足を大の字に広げ、応接スペースを占拠していた。


「ごめんって~、楓。いえ、楓さま。本当に申し訳ありませんでした。

 でも笑わないって言ったけど、これは無理だよ」


 不機嫌極まりない楓の肩を、由佳ゆかは必至に肩もみした。


坂田金時さかたきんときさんを侮ってるんじゃないよ。そうじゃないけど、どうしても金太郎って絵本の印象が強くて」


 そう言いながら由佳はまた笑いが込み上げてしまった。


「まあ、いいわ。そうね。絵本のクオリティが高すぎるのがいけないのよね。

 その絵本で多くの子供が健やかに育っている尊い輝きの裏で、影となってしまった暗い部分が私にふりかかるのを甘んじて受け入れてあげるわ。私は空気を読む女だもの」


「本当にごめんね、楓。でも楓もそうしたすごい人の生まれ変わりで、金剛力こんごうりきって特技があって羨ましい。私なんて誰の生まれ変わりでも、力の継承者でもなく、神様が《視える》だけだもんね」


「そ、それはちゃうで由佳。うちらの中やと由佳が一番すごいんよ」


「そうだぞ、由佳。お前は一番凄いんだからな」


「え? そうなの? なんで?」


「由佳、お前は神様が《視える》だけじゃない。神様と話ができるとても稀有な才能の持ち主だ」


 由佳が「どうゆうこと?」という感じだったので、狗巻が説明をした。


「神様は俺たちの声を一言も漏らさず聞き届けてくださる。それこそ神社に行かなくても、どこにいても、神様に対して思ったこと、願ったこと、話したことはすべて聞き届けて下さっている。

 しかし、神様は絶対に俺たちに返事をしたり、反応をしたりしない。

 だから俺たちは神様と「お話」ができないんだ」


「そうなんだ。でもどうして神様は返事をしたり、反応をしたりしてくれないのかしら。少しでもそうしたことをして下されば、みんなこぞって神様にお参りすると思うんだけど」


「まさにそれこそ神様が危惧きぐしてるだ」


「そうなの? それはなんで?」


「それはやね、由佳。神様の存在が確かで、願い事をしたら聞いてくださっているゆうことが知れたら、世の中の人みんなが神頼みをすることになるとからなんよ」


「そうよね。自分の努力を怠り、神様にすがる人が続出するでしょうね」


「まあ、そうだろうな~。そうならないように神様は返事も反応もしないし、自分が存在していることを明らかにしないんだろうな」


 4人の説明を聞いて由佳は「なるほどね…」と思った。

 同時に少し寂しい気持ちになった。

 人々が、それ程に弱く、神様にすがってしまう性分だということが残念だったのだ。


「日本に限った歴史の中だと、神様と話をして、そのお言葉を人々に伝えたのは、おそらくたったひとりだけだろうな」


「え? そうなんだ。ひとりしかいないんだ」


「そうだ。そして由佳。お前は間違いなくその人の生まれ変わりだ」


「私が?」


「そうや。間違いない。その人は神様の声を人々に伝え、国をまとめ、日本を治めた人や」


「すごい。そんな偉業を成した人なんだ」


「由佳も世が世なら、その人みたいに女王になってただろうな」


「きっとそうね。でも由佳は今でもわたしたちの女王さまよ」


「えー? じゃあ、その女王さまに肩をもませてる楓って~?」


「それは由佳が約束を破るからよっ」


「いいか、由佳。神様と話ができるということはそれくらい凄いことなんだ」


「自分がめちゃくちゃすごい人やってわかったやろ?」


「うん。わかった。ありがとう。ちょっと自分に自信がもてたよ。

 でもさ。その私の前世の人って誰なの?」


 そういわれて4人は顔を見合わせた。

 そして狗巻が代表して由佳にその人物が誰であるかを教えた。


「由佳、それはな。邪馬台国やまたいこくの女王・卑弥呼ひみこだ」




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すみません。すごいビッグネーム(卑弥呼)使っちゃいました。

(,,•﹏•,,)


私の小説を読んでいただきまして、本当にありがとうございました。

今回のお話はどうでしたでしょうか?

皆さまに「面白い!」と思っていただけるよう頑張ります!

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