第58話 エピローグ 物語の終わり

 ~エピローグ~


 約束の地カナンに来て、はや2か月が過ぎようとしていた。

 比較的寒冷地だったハートフォードシャーに比べ、カナンは温暖な地だった。

 あれから神々とは話していないが、事前説明で、カナンには、異世界からたくさんの善人が集まる地、と聞いていた。

 人口がどれぐらいいるのか、12人の使徒は知らなかったが、大勢の人たちが普通に暮らしているのには驚いた。

世界アラシュアもまた、美しい世界ではあったが、カナンはそれを上回る、風光明媚な土地だった。

 12使徒たちは、バラバラに暮らすこともできたが、世界アラシュア出身の、カナンの住人はそうそう見つからず、というのもあり、孤独感から、一緒に近くで暮らすことにした。

 ユーフェニア神の配慮で、12使徒が暮らすにふさわしい、一つの小さな村を紹介してもらえた。他の世界出身の人たちもいたが、空いている家の部屋が30個ほどあり、12使徒は、その村で、おのおのが好きなようにパーティーを組み、家族のように家で暮らした。

 リアンノンとシルウェステルは、晴れて夫婦になり、子供を3子作った。女児一人に、男児二人だった。


「世界アラシュアってなに、お母さん??」と、その娘が成長し、5歳になったころ、母となったリアンノンに尋ねた。

「そういう世界もあるのよ、アマ―リア」と、リアンノンが娘のアマ―リアを抱き上げて、膝に乗せて言った。

「じゃあ今日は、世界アラシュアの絵本を読みましょうか、アマ―リア」と、リアンノンが言って、本を読み始めた。

 その本を読み終えた後、部屋にシルウェステルが入って来た。二人の男児を寝かしつけたのだ。

「リアン、アマ―リアもそろそろ、寝る時間じゃね?」と、シルウェステル。

「そうね、シルウェステル。アマ―リア、ほら、そろそろ寝ましょうかね」と、リアンノンが言って微笑んだ。 

 3人の子供を寝かしつけた後、二人は、小さな一軒家で、「久しぶりに、夜空の星でも眺めるか」と言って、窓のカーテンを開けた。そこからは、美しい星々が見えた。

 その星々の内の一つ・・・読者であるあなた方が夜空を見上げるとき、そのうちの星の一つが、シルウェステルとリアンノンをはじめとする、12使徒なのかもしれない。

 今日もまた、世界アラシュアからの12使徒がやって来た、ということで、天体の星の数が、12個増えた。


「闇もあなたに比べれば闇とは言えない。夜も昼も共に光を放ち 闇も、光も、変わるところがない。夜も光が私を照らし出す」

 夜空を眺めながら、リアンノンがふと、ゼルフィーネが教えてくれた合言葉のような言葉を呟いた。

「きっと明日はくる、素敵な明日も、素敵な祝祭日も。あなたがいるならね、シルウェステル」と、リアンノンが、シルウェステルの方を向いて笑って言った。

「家族みんなで、幸せに暮らそう、リアン。君と出会えて、本当によかった」

                                                    《完》



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大地の巫女リアン ~思慕の誓い 再び逢う日まで~ 榊原 梦子 @fdsjka687

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