第57話 お星さまになるということ

 約束の地・カナンへ行くということは、すなわち、地上の生きとし生けるものから見たら、「お星さまになる」ことと一緒だと、神々から告げられた。絶対の安全が保障されるとともに、その世界から、下界の世界アラシュアを見守り続けるのだ。天空から。

「俺は行くよ、リアンのためにも」と、シルウェステルが言った。ハインミュラーも、「俺もついていく」と即断した。

「私たちも行くわ」と、5巫女のうち残りの4人が言った。

「私たちも、リアンたちのこと好きだし、私たち4人、仲良しだしね!それに、シェムハザのことを想うと、天国だと怖いわ」と、ヘレン。

「僕も、特に会いたい相手もいませんから、カナンへ行きます。僕はリアンノンさんと仲良しですしね」と、バーナード。

「自分も長兄として行く」と、ロイ。

「これは珍しい、12使徒全員が約束の地へ行くとは」と、ノストラダムス神が言った。

「そういえば、リゼティーナさんとセレスさん、前世のあなた方の親代わり・リュディガー神父が、君たちが約束の地・カナンに行く前に、一目会いたいとおっしゃっていましたぞ。どうします、お会いになりますか??」と、ノストラダムス神。

「神父様が!!?」と、リゼティーナ。セレスも驚く。

「姉さん、ここは会いましょうよ!!」と、セレス。

「そうね・・・セレス、二人で会いましょう」と、リゼティーナ。

「では、リュディガー神父様をお呼びしましょう」と、神々の女性の一人が言った。

 12使徒は、神々のいる天界にいた。やがて、1時間後、神々の侍女たちに導かれ、一人の壮年の男性が、扉を開けて姿を現した。

 初老・・・というのはおかしいか、少し若い。前世ではエイダとブレンダだった、リゼティーナとセレスが、「あら、お若いリュディガー神父だわ」と思わず呟いたほどだった。

「エイダとブレンダ・・・かい??」と、リュディガー神父がきょろきょろし、やがてリゼティーナとセレスに目をとめ、言った。気づいたのは、神々の侍女があらかじめ教えておいたのもある。

「神父様・・・・!!」と、リゼティーナとセレス。

「二人とも、話は詳細に聞いておるが、立派になったな!」と、リュディガー神父が両手を広げて、二人を迎え入れた。

 リゼティーナとセレスが、リュディガー神父に抱き着く。

「お若い神父様だわ!!」と、リゼティーナが泣きながら言った。

「はっはっはっ、エイダは相変わらず鋭い子じゃのう!」と、リュディガー神父。

「笑いごとではありません、神父様」と、セレス。

「そうだな、ブレンダ・・・いや、セレス。なんでも、二人で街を山賊から守り、その後聖人として12使徒になったとか。私は、寿命を終えた後、普通に天国に行き、ずいぶん前に亡くなった妻と暮らしていたが」

 リゼティーナとセレスは、神父様に妻がいたことを、その時初めて知った。生前、神父様は、自身の過去について、あまり何も言わなかった。

「約束の地カナンに行っても、二人で幸せにな!私はここから、天国から、星になった君たちを見守っておる。いや、どちらかというと、見守る側になるのは星になる人の方かな」と言って、リュディガー神父が笑う。

「君たちを育てて、育て親として誇りに思うよ、エイダ、ブレンダ」と言って、リュディガー神父は、侍女たちに導かれ、やがてその場から手を振って立ち去った。

「さて、と」と、女神・ユーフェニア神が言った。

「それでは、12使徒の皆さま方は、そろそろ、その任を終え、約束の地カナンへと赴いていただきましょうか」と、ユーフェニア神が優しく微笑んで言う。

「封印の国・ハートフォードシャーはどうなるんですか??」と、リアン。

「元大地の巫女・リアンノンよ、もう代わりの12使徒は選んであります。ハートフォードシャーは、世界アラシュアを悪神シェムハザから守るため、これからも存続し続けます」と、ユーフェニア神。

「さて、皆さん、行きましょう。案内しますが、この神々の間の、奥の階段を一歩ずつ上がってください。ゆっくりでいいです、そして扉を開けたら、そこはこことは異世界で異次元、約束の地カナンです」と、ユーフェニア神が言った。

「リアン、俺と手をつなごう」と、シルウェステルが、リアンノンに手を差し伸べた。

「うん、シルウェステル」と、リアンがそれに応じる。

 12人の使徒たちは、リアンノンとシルウェステルを先頭に、おのおのが階段を上がっていった。

 そして、リアンノンとシルウェステルは、古めかしい大きな扉を抜け、その先の世界へと足を踏み入れた。


 ――この世とお別れし、約束の地・カナンに行くために。―――


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