第十一章 星降る夜、あなたは帰ってくる

第56話 約束の地カナン

 第十一章 星降る夜、あなたは帰ってくる


「終わったな、リアン」と、シェムハザ封印の一週間後、すべての手続きや、神々との話し合いを終えたあと、丘の上の草原に座って、夜空を見上げながら、リアンノンと話しているシルウェステルが言った。

「そうね、シルウェステル」と、リアンが言って、微笑み、シルウェステルに肩を寄せる。二人とも座っている。

「結局、アテナ神じゃなくて、スマローコフのやろうが、君の記憶を奪っていたらしい。あと、兄さんが、神々の中にスパイがいる、と言っていたが、アテナ神でないことは証明された。結局、誰なんだろうな・・・・??」と、シルウェステル。

 神々の間に呼ばれたシルウェステルたち12使徒は、アテナ神の潔白の証拠を、神々で一番偉いというガイア神から見せてもらったし、他の神々も納得した。

「私は帰って来たわ、シルウェステル」と、リアンが呟くように言った。そして、

「やよやよ・・・・」とそっと言ったのだった。

「!?リアン、君もやよやよを知ってるのか!!」と、シルウェステルが驚いたように言った。

「ええ、シルウェステル・・・ゼルフィーネさんが、前教えてくださったから。あなたも知ってるの?意外だわ、彼女、あんまりそのこと、私たち5巫女以外には話すつもりはない、っておっしゃってたから」と、リアン。

「・・・そうか、ああ、まあ機会があってな!俺の兄さんは詳しくは知らないが、俺には話してくれた」と、シルウェステル。

「闇もあなたに比べれば闇とは言えない。夜も昼も共に光を放ち 闇も、光も、変わるところがない。夜も光が私を照らし出す。いい言葉よね」と、リアンノンがすらすらと暗唱して言った。

「俺の希望は、君だよ、リアン・・・」と言って、シルウェステルがリアンの右手に、そっと自身の手を重ねた。

「あら、私はずっとあなたの傍にいるわ、この世が終わってもね」と、リアンが微笑む。

「お帰り、リアンノン。俺のアイリーン」と、シルウェステルが言って、朗らかに微笑んだ。

「ただいま」


 そう言って、二人は深いキスを交わした。


「お前にしては時間がかかったな」と、近くの丘から、キスしている二人をそっと見守っていたヅラとアラミスが、話し合っていた。

「もっと早く終わると思っていたぞ」と、ヅラがアラミスに言って笑う。

「うるせえよ!慎重に行っただけだ、相手はあのシェムハザだからな」と、アラミスがぼーっと二人を見やって、「ああ、俺も誰か好きな人とキスしたい・・・」と呟いたのだった。

 一同は、神々からの提案に迷っていた。

 12使徒のうち、望むものは天国に、そしてそれすら拒み、絶対の安全を望むものは、約束の地・カナンへ行くことを許されたのだった。神々が許可を出した。

 神々から、大地の巫女であったリアンノンと、彼女の交際相手のシルウェステル聖騎士は、約束の地・カナンへ行くことを勧められた。存在自体、悪神シェムハザから永遠に狙われるだろう、ということだった。アラミスとヅラもまた同じ理由で、シェムハザから狙われる恐れがある、ということで、約束の地・カナンへ行くことを勧められた。


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