第9章 石化という死

第46話 犠牲になる覚悟

第9章 石化という死


《リゼティーナ姉さん、そっちは不備ないわよね?》と、セレスがリゼティーナに短距離通信する。聖人の力でもある。

《ないない、こちらは順調。ゼルフィーネは?》

《準備万端よ!いつでもいいわ》と、ゼルフィーネ。

《リアンと私も待機してるわ》と、ヘレン。

「天つ空にて、いと青白く輝きたる月は

 今宵汝に聖き祝福を授く。

 わが祈りと儀式による嘆願にもとづき

 主・女神イザヤ神の胸を我への愛で満たすべく。」

 と、5巫女が同時に、手でポーズを作って祈祷を始める。

 と、その時、それを天界から見ていたアテナ神が、「神々の砂時計」を反転させ、時を止めた。そして、下界(人間界)へ降りて行った。

『大地の巫女・リアンノン!』と、空を舞う彼女は、止まった世界で唯一動けるリアンノンに呼びかけた。

「!!あなたは・・・??」リアンノンと女神アテナ神が会ったのは、前世のだいぶ昔のことだ、リアンノンには分からなかった。

『私は女神アテナ神。この世界アラシュアの神様です。前世のあなたに、聖人として12使徒に転生しないかと誘った神でもあります』と、アテナ神が思い出すよう促す。

 リアンノンが緊張した面持ちで頷く。

『分かっていますね、リアンノン、この事態のひどさを。大地の巫女のあなたなら、皆には言ってなくても、自分で分かっているでしょう』と、アテナ神が言った。

「ええ、分かっています、アテナ神。このままでは、5時間20分後、悪神シェムハザが地の底から大地へ復活してしまいます・・・5巫女でどんなに、おさえつけて時間稼ぎしても・・・」と、リアンノン。

「あなたが来るのを待っていました。私なら、犠牲になる覚悟はできています」と、リアンノンが一礼して静かに言った。

『ならいいのです、大地の巫女よ』と、アテナ神。

『前回会ったときより、成長しましたね』と、アテナ神が微笑んだ。

「皆には分からないようにしてくれますか・・・その、邪魔されては困るのです」と、リアンノンがアテナ神に言った。

『そのために私はここに来たのです、半分あなたを説得するためでしたが、貴方は物わかりがいいようだ』と、アテナ神。

「あ、でも、アテナ神、」と、リアンノンが、アテナ神とともに神殿の階段を降りながら言った。

「彼だけは」と言って、階段の途中で立ち止まる。

「シルウェステル・・・クレド様のことです・・・彼だけは、分かってくれると思うので、時間の流れを動かして、ここに連れてきてください。最期が一人では、あまりに心細いですから」と、リアンノンが淡白に言った。

『いいでしょう、大地の巫女様』と、アテナ神。

『連れてまいりましょう、リアンノン。あなたは、そこで準備をしていてください』と言って、アテナ神はその場から姿を消した。瞬間移動だ。神々ならできる。

 消えたアテナ神を見て、リアンノンは軽くため息をつき、階段を再び降り始めた。


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