第43話 光の神殿へ


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「こりゃもうだめだ」と、シルウェステルが言った。

「この書簡を見てください、ロイ兄上様、俺らが石像一体壊れているとの文面を、スマローコフの奴、大賢者で寿命を全うした魔力を使って、見事に改ざんしてます。ちんぷんかんぷんな内容です、だからアテナ神の返事も、どこか話が嚙み合わなかったんでしょう。そして、この最後の書面」と、シルウェステルが、ロイに見せた。

「我が主へ 復活のための準備がそろいつつあります。先日、仰せの通り、光の神殿奥にある、初代・大地の巫女・ウェヌスの石像を、我が魔力でバラバラに壊しておきました。毎日少しずつ壊そうとした100年間の努力のかいもあり、先月壊すことに成功した次第です・・・・」

 と、シルウェステルからもらった手紙を、ロイが読み上げる。

「我が主ってのは、シェムハザのことだな、やはり」と、ロイ。

「そ、そんな・・・・」と、バーナードがおびえた声を出す。「僕、知らず知らずのうちに、長老の仕事の手伝いをしてたってことですか??」

「でも、最期こうして我々にヒントをくれたのもあなたです。あなたは悪くない」と、シルウェステル。

「ハインミュラーは、ヅラさんを見つけられただろうか」と、ロイ。


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「俺が貴様を恐れていると思ったら、大間違いだぞ!!」と、ヅラが剣をシェムハザに突き付けた。

(スマローコフにはいろいろと聞いたり、言質をとりたいこともあるが、ここはシェムハザを封印しなおすことが優先・・・!!)と、ヅラが頭の中で思う。

 シェムハザを封印する。言葉でいうのは簡単、するのは難儀なことだ。

 要は、シェムハザを倒して気を失わせ、その間に、12使徒の5巫女に封印してもらう必要がある。

 相手は根っからの神だ。なにせ、この世を創った神と同じぐらい古い神々の一人と聞く。

 その分力も強いらしく、相当厄介な相手ともいえる。

 だが、ヅラは引き下がらない。

「抜刀・風雲・雪月花!」と言って、七聖剣で檻の柵をバラバラに崩した後、スマローコフを取り込んだシェムハザに斬りかかる。


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 その頃、ヅラを見つけるのを諦めたハインミュラーは、5巫女の力が必要と判断し、例の温泉に行って、5巫女に、光の神殿に戻るよう通達することにした。

「おーーーい、5人の巫女さぁ~~~ん!!」と、少々離れたところから、ハインミュラーが叫ぶ。

「何ヨ、なんか用、兄さん!??!」と、ハインミュラーの背後から声がした。ヘレンの声だ。

「わっ!!ヘレン、なんだもう温泉からはあがってたのか!」と、ハインミュラー。

「当然よ、あれから何時間たったと思ってるの?」と、巫女服をすでに着ているヘレン。

「大変なんだ、スマローコフ長老が、俺らを裏切り、シェムハザ復活のために悪に堕ちてたことが分かってな!今、光の神殿で大騒ぎなんだが、封印の石像が、全部粉々に砕け散ってるんだ!!」と、ハインミュラー。

「なんですってぇ?!?!」と、ゼルフィーネ。

「そ、そんな・・・・」と、セレスが真っ青になる。

「危険よ」と、リゼティーナ。

「ハインミュラーさんたちは知ってるかしらないけど、あの石像一つ一つにも、シェムハザを地上に出させず、地下に封じ込めるまじないのようなものがかかってるし、意味あるものなのよ」と、リゼティーナ。

「お兄ちゃん、アテナ神は?私、手紙書いてたじゃない」と、リアンノン。

「それについては後だ。リアン、君の書いてた手紙も、長老が改ざんしていたそうだ。とにかく、全員で光の神殿へ向かう。ヅラさんと長老は行方不明、また、光の神殿には、残りの12使徒がそろってる」と、ハインミュラー。

 6人は、急いでその場から神殿へと向かった。そう遠くない距離だ。


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