第42話 VSシェムハザ

「かなりの量の枚数ですね…予想はしてましたが」と、シルウェステル。ロイとバーナードが、復元された紙を1枚1枚チェックする。

「ちょっと待って」と、シルウェステル。

「この紙、すべてに偽装の魔法がかけられています。魔法のインクで書かれたんでしょう、本当は違う書類です。魔力のにおいが残ってるから」と、シルウェステル。

「ならば、それをとけば・・・!!」と、ロイ。

「ええ、本当の証拠が見つかるでしょう。おそらく、簡単に」と、シルウェステル。

「!シルウェステルさん、これ、通信書のような文・・・手紙があります!!」と、バーナード。

「どんなものですか」

「我が主、と宛名が書いてあります・・・手紙では、直接名前は呼ばず、『我が主』と呼んでいるようです。女神アテナ神のことも愚弄してますから、アテナ神は白のようです」と、バーナード。

「俺もそっち見ます」と、シルウェステルが身を乗り出す。


              *


 「黄泉がえりの神殿」にたどり着いたヅラ・ラ・ラスコーニは、その入り口が地震か何かで崩れ去り、覆われているのを見た。

 ヅラが馬から降りたとたん、中から男の悲鳴が聞こえた。スマローコフの声にも聞こえる。

「やつか!??!」と、ヅラ。

 ヅラは前世、並ぶもののない剣士のような人で、魔法は多少は使えていた。賢者だったシルウェステルのように、魔法を自由自在に・・・というわけにはいかない。

 何とかして中に入る方法を探そうとして、神殿の裏手に回って見たりした。ちょうど、横手の窓が錠があけていた。

 馬を置いたまま、ヅラはその窓から中に侵入した。石の神殿内に降り立ったが、敵の気配はない。

 すると、廊下をしのびしのび歩いていると、「シェムハザさまぁ~~~、どうかお許しをぉ~~~~!!!」という、スマローコフの苦しそうな声が聞こえた。その声は、どちらかというと地下に移動していった。

(地下牢か・・・!!)と、ヅラは思い、黄泉がえりの神殿には内部の構造詳しくなかったとはいえ、地下へ降りる階段を見つけた。そこから、七星剣を持って降りていく。

 そっと地下におり、叫び声のする方へ近寄っていくと、一番広い地下牢の中に、やつはいた。スマローコフだ。

「・・・ねずみが一匹」と、この世のものとは思えない、幽霊のような声がした。ヅラはぞっとしたが、動揺はせず、

「バレているならしょうがない」と言って、地下牢の真ん前に立った。

「お主・・・その剣・・・・12使徒のひとりか・・・」と、その真っ黒でドブ沼のような物体・・・・流動的で、固体を持たないように見える物体が言った。

「ヅラぁ!!」と、その物体から取り込まれそうになっているスマローコフが叫んだ。

「助けてくれぇ!!」と、スマローコフ。

 物体は、わざと時間をかけて、スマローコフを順々に食べているようだった。

「スマローコフよ、」と、その物体が言った。

「時間が来た、もうお主に用はない」

「シェムハザ様、どうかご慈悲を!!」と、スマローコフの顔が埋まったり出てきたりを繰り返す

 やがてその声も聞こえなくなった。スマローコフは前世は大賢者だったらしく、殺すのも難儀なのだろう、とヅラは推測した。

「シェムハザ、と言ったな」と、ヅラがその物体・・・シェムハザに言った。

「そうだ、若造よ」と、シェムハザ。

「神とはいえ、悪に堕ちた神と聞く。長老もまた悪に堕ちた存在らしいが。二人して、オレが斬る!!」と、ヅラが七星剣をすらりと再び抜いた。

 前世では、ただの剣士であったヅラも、今世では、12使徒の力を使える。魔法にも似ていて、空中移動が魔術師より容易にできることが特徴だ。ドラゴン・・・竜人であることの証拠でもある。


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