第9話 聖人の任に就く

「竜人、というのは、聖人という意味です。賢者二人の命をとしてまで護りたかったもの、それがあなた。そこで、クレド賢者と、アレクシス賢者も承諾されましたが、あなたと3人で、聖人になりませんか。3人でずっと一緒にいられます」と、アテナ神が、竜人(聖人)の仕事や役割について、簡単に説明した。

「聖人としての期間がおわれば、無事天国に上がれます。ちなみに、今あなたが天国にそのまま上がると、クレド賢者とアレクシス賢者は、徳の高い者同士ですから、一緒にいられますが、あなたは一シスターさんですので、別の国に送られます。3人一緒にはいられません。どうですか。世界アラシュアを守るために、力を貸してくれませんか」と、アテナ神が言った。

「わ、私は・・・・」と、アイリーンが言った。

「天国に上がる方法もあります。そうすれば、あなたはご自身の亡くなったご家族と会えます。ただし、クレド賢者とは、二度と会えません」と、アテナ神が言った。

「そ、それは・・・」と、アイリーン。

「賢者様が行く世界はまた別なのです、天国でも」と、アテナ神が言った。

「あの、クレド様はなんて・・・??」

「クレド様は、貴女と生きる道を選ばれました。どうでしょうか・・・?なお、亡くなった妹さんがいた、というのは嘘だそうで、本当は、昔救えなかったある少女とあなたが、うり二つだったそうです」と、アテナ神。

「・・・!!!」と、アイリーン。

「聖人としての任務は、約1000年間です。どうですか、その間、クレド賢者と、同じくあなたを守る魔法を作った、アレクシス賢者と一緒に、添い遂げてはみませんか」と、アテナ神が言った。

「・・・なら、受け入れます」と、アイリーンが言った。

「分かりました。あなたには、聖人になる素質があると見込んで、その上で頼みました。竜人になる才能があります。では、さようなら、アイリーン・ラッセルさん。名前を変えて、人生も変えて、記憶を残したまま、第二の人生を送ってもらいます。あなた方を護ってくださる勇士もおられます。そう言う世界です」と、アテナ神が言って、手をアイリーンの額にかざした。

「最後に、願い事を一つだけ、手を胸の前で組み、しなさい。それが儀式の最後です」と、アテナ神が言った。

 聖なる光に包まれて、アイリーンは目をつむった


――クレド様と添い遂げ、世界平和に貢献できる、主に仕える十字教の一人の女性としての気概を失いませんように――


 それが、意識が途切れる前の、最期の記憶だった。

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